切り札は誘惑

「そろそろ情事というのをはじめていい時期なんじゃないかな」一年もいっしょに仕事をしてきたコナーの言葉を誤解したときから、ジェネットは彼を一人の男として意識しはじめた。人気ＴＶドラマの脚本家ジェネットは、夫を亡くして一人暮らし。ときどきいらいらするけど、恋人がほしいと思ったことはなかった。洞察力の鋭いプロデューサーのコナーは、私の心の奥が見えるの？彼は局内を歩くたびに女性のため息が聞こえるほどセクシーな男。でも、私は今の気楽な生活が気に入っている。「あなたとの情事は気がすすまないわ」そう答えたけれど、コナーはドラマの展開について話していただけだったなんて！若い男性と浮き名を流す母を見て育ったジェネットは、恋愛ゲームは嫌悪している。もし、彼が真剣に愛してくれたら…。