海のボヘミアン

海育ちのわたしが溺れるなんてありえない。たとえ彼がどんなにすてきな男性でも。デージーは地元の漁民もめったに近寄らない海域で船を停めた。最近このあたりで密輸が行われているという噂だけど、小えびの群れを逃すわけにはいかないわ。今日もまた雲ひとつない青空。近くにいる豪華なクルーザーでは、金髪の少女が手を振っている。デッキチェアの男女は両親かしら。そのとき、不審なモーターボートが近づいていくのが見え、続いて爆発音が空気を引き裂いた。振り向くと、クルーザーが上空に吹き飛ばされている。デージーは悲鳴をあげ、海に飛び込んだ。必死に泳ぎ、女の子のライフベストをつかまえる。このとき事件に巻き込まれたんだわ。やがて少女の実父、ハンサムなホテル王テンプルが現れた日、デージーは思い知ったのだった。