卵と小麦粉それからマドレ-ヌ

本作を初めて読んだのは今から約16年前。 まだまだ学生の頃でした。 最近血生臭いミステリーばかり読んでいたので 少し箸休めに、と久しぶりに手に取ってみました。 （おそらく10年は読んでいなかったと思われます。） 内容としては中学生になったばかりの少女の心の成長を描いた物語。 まず最初の数ページ読んでみて思ったのが、 「こんなに児童書っぽかったっけ？」 というのも、 漢字が少なめで表現もとても分かりやすいものだったからです。 （今考えれば、主人公が中学生なのだから心理描写に小難しい表現は似つかわしくなく寧ろリアリティがあって良いです。） ここ最近難しい表現を多用されるミステリー作品が続いていたので余計にそう感じたのだと思いますが、 もしかしたらかなり物足りない感じかも、、、と思いつつ 一度読み始めた本はどれだけ気分に沿わなくても必ず読み切るのがマイルール。 サラ〜っと読んじゃえ、とライトな気持ちで読み進めることにしました。 が、1ページ1ページ読み進めるごとに引き込まれる。 物語の深みは文章の読みやすさとは全く関係ない事を改めて思い知らされます。 中学生というまだまだ狭いコミニュティの少女を描くのに学校生活や友人関係は当然に外せないパーツなのですが、メイン舞台は家庭内の母娘の絆。 初めて本作を読んだときは学生。 今は子を持つ母。 以前とは異なり母親側の視点でも作品を楽しむことができたのもとても感慨深かったです。 そして、とても驚いた事に本作が ずっと人生の指針になっていた事に気がつきました。 私は子供と将来について語るとき 「何歳になったって将来の夢を持ったっていいじゃない。 お母さんは今だって、将来何になりたいかなって考えてるよ。」 とよく言うのですが、 これ、まるきり主人公の母の投影なんです。 まさかこういう形で自分の中にこの物語が取り込まれているとは。 こういうのを人生に影響を及ぼした作品というのでしょうか。 主人公は作中で12歳から13歳へ、子供からティーンにかわっていくのですが 私もちょうど今日が誕生日の前日。 仕事や家庭を絡めながらこの先の人生について考え、区切りをつけたタイミングでしたのでとても良い節目に再読できたなと思います。 表現が簡潔なだからこそ自然とスッと心に沁み入るものがあります。 心の栄養になりました。 感謝。 2022.7.2

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