国をつくるという仕事

西水美恵子

2009年4月30日

英治出版

1,980円(税込)

ビジネス・経済・就職

前世界銀行副総裁が語るリーダーシップの真実。貧困のない世界を夢見て…23年間の闘いから見えてきたもの。

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(無題)

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3.4 2018年01月27日

こんな凄い日本人女性がいたのか、そして世界を相手に一歩も引かずに仕事をした女性の原動力は正義の味方をすると言う、単純なところに収斂されるというのですから、驚きです。世界中の貧困撲滅のために、何のてらいもなく正義の味方の活動をしているんですね。 そうは言っても世銀の活動は、無償援助ではありませんので途上国にどのように融資するのが適切であるかを考え、長期・低利の融資を実施します。無論商業ベースですので、リスク管理が求められます。リスクヘッジの最大の要素は、長期の融資期間後に国体が存続している事、だそうですから、審査業務にあたる彼女の歴史観や国家観に確かさが求められます。では不安定な途上国にあって20年30年後に国体の存続を確信できる要素とは何なのでしょう。彼女は本書の中で次のように述べています。『人間が人間として生きるための最低限の「安全保障」は、心身の健康と、胸に灯す希望なのだ。貧しさとは、この保障がないことだ。そしてその原因が、やむことを知らぬ権力者の搾取にあるとき、貧民が持つ捨て身の鬱憤は恐ろしい。暴動、犯罪、過激思想にはけ口を見つける人口が増える国、その行く末は、国体消滅の危機なのだ』。ですから彼女は融資の影に隠れた政治家・公務員の賄賂体質にも敏感で、国の将来を危うくするそれらとは、全力で闘います。学校や診療所が無いから貧しいのでないのです。建物はあっても私利私欲のためにそれらを食い物にしてしまう人間の愚かさが悲しいですね。 本書は世銀副総裁を退任後、現役時代の思い出を語るという形で数々のエピソードがつづられています。国王から売春婦まで多くの人との触れ合いが語られますが、その触れ合いは魂の触れ合いです。彼女は自らのハート、どう感じたかを基準に行動します。また、彼女の人を見る目の確かさには驚かされます。それは彼女の鉄のような信念からもたらせられたように思われます。その信念とは、指導者の資質が国のガヴァナンスの良し悪しを決め、良いガヴァナンスは貧困解消を促進する、というものです。 プリンストン大学で教鞭をとっていた著者は、世界銀行へ転職したのですが、これを父親に報告したところ「教壇の神職から、金貸しになり下がるのか!」と怒鳴られたとのエピソードが語られています。しかし、それからの彼女の二十三年間は、「貧困のない世界をつくる」夢を追う幸せに満ちた毎日でした。高い志を持ち続けながら、貧困の現場に飛び込んで彼等と寝食を共にしてその国のサイレントマジョリティの真実の思いを掴むのが彼女のスタイルです。世銀副総裁の地位をバックにした彼女の剛腕と持って生まれた正義感は、途上国の権力者の心を動かすだけの影響力があります。そんな彼女の活躍は一種の通快さを伴うとともに魂を揺さぶられる感動があります。本書読書のひと時は、気高い精神との触れ合いのひと時でもありました。

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