拡大するヨーロッパ世界 1415-1914

玉木俊明

2018年11月16日

知泉書館

6,600円(税込)

人文・思想・社会

ヨーロッパ主導の近代はいかに可能だったのか? イギリス帝国はどのように形成されたのか? 高緯度の厳しい自然環境のため,必ずしも豊かでない古代から,7世紀以降イスラーム勢力に囲まれてきたヨーロッパは,大西洋への進出を機に数世紀をかけてアジアの経済水準に追いつき,19世紀には圧倒的な勢力となった。本書は,500年にわたるヨーロッパの経済発展の経緯を,アフリカ,ラテンアメリカ,アジアとの交易および支配=従属関係を視野に,広角的に描いた画期的業績である。 ウォーラーステインの世界システム論,ポメランツの大分岐,さらにプロト工業化論など先行研究にひそむ生産史観やヨーロッパ中心主義を批判し,「商業」という新たな視角から,海運業の発達,情報の非対称性の少ない社会の成立,商業ルールの形成に着目して成長の要因を解明する。15世紀にアジア進出を果たしたポルトガル,最初のヘゲモニー国家オランダの具体的様相を分析し,異文化間交易を支えたディアスポラの民にも光を当てる。その中で,イギリスが強大なヘゲモニー国家となり,なぜ世界を制覇しえたのかを,蒸気船,綿製品,海上保険や金融・情報システムの開発などを軸に明らかにする。 欧米の最新研究やデータベースを駆使して表現した新たな世界史像は,グローバル化と情報化が進展する今日,基本文献として多くの示唆と刺激を与えるに違いない。

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