ホーダー

捨てられない・片づけられない病

ランディ・O.フロスト / ゲイル・スティケティー

2012年1月31日

日経ナショナルジオグラフィック社

2,090円(税込)

人文・思想・社会 / 美容・暮らし・健康・料理

「片づけられない!」誰でも経験したことがあるこの問題が、生活困難にまでエスカレートしてしまうのはなぜなのか。片づけができない原因の1つとしてADHDは知られるようになったが、原因はもちろんそれだけではない。また本書では、ホーダー自身の事例のみならず、家族がホーダーである場合、ホーダーの親を持った子供への影響、子供によるホーディングなども取り上げる。積極的にホーディング問題に取り組んできた第一人者が、物質社会特有の病をさぐる。

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstarstar 5.0 2019年01月16日

[private] 20171023メモが長すぎたので分割. pp.336-337 「 私たちの一世代前、一九四七年に、精神科医で人本主義(ママ)の哲学者であったエーリッヒ・フロムは、所有物にコントロールされる社会を予見した。人は「持つ」と「在る」という、社会に対する二つの基本的な傾向によって特徴づけることができるというのが彼の主張だった。これらの傾[改頁]向は、人がどのように考え、感じ、行動するかの大部分を決定するからだ。「持つ」傾向の人は財産を、ときには人々までを手に入れ所有することを求める。この人の自己意識や世界観を表す鍵は、所有することである。フロムによれば、商業主義によって動かされる文化では、「持つ」傾向が育まれる運命であり、結果として空っぽで満たされない社会が生まれる。一方、「在る」傾向の人は所有することよりも経験を重んじ、この人は他の人々と物事を共有したり協調して行ったりすることから人生の意味を見出す。  現代の社会科学者は、「持つ」傾向を「物質主義」で説明し、それについてかなりの研究が行われている。そしてフロムが予見したことのほとんどが、この研究によって裏付けられた。物質主義者の人生では、所有することが中心的な役割を果たす。何かを所有することは自己増強、アイデンティティ、そして社会的立場を得るための手段であり、日々の活動をするための原動力でもある。物質主義者は所有物によって自己意識を高めるだけでなく、幸せを感じる。だが皮肉なことに、所有することで反対の結果が生まれるようだ。多くの研究で、高度な物質主義者は、「持つ」ことに対するそのような傾向を持たない人々に比べて感じる満足度と幸福度がより低いと記録されている。とはいえ、物質主義によって満足度や幸福度が減ってしまうのか、あるいは物質主義的なゴールを目指すことで人が不幸せになるのかは、この研究からは明らかでない。  最近発達してきたポジティブ心理学は個人的な美徳(ママ)について研究する分野で、「何が人々を幸せにするのか」といったテーマを研究している。ポジティブ心理学が所有することの役目とその意味について注目していることは、べつに驚くべきことではない。どんな買い物の仕方が人々を[改頁]幸せにするかについての調査から、外食や旅行といったイベントに結びついた買物をするときの方が、モノを手に入れるための買物をするときよりも幸福を強く感じることがわかった。最新の買い物について感じたことを調べた他の調査でも、同じ結果が出た。また、最新の買い物について考えてもらう調査では、モノについて考えるよりも経験について考える方がたいてい幸福感が強いという結果だった。」 p.342 「 情報を溜めこんでしまう人への支援として、私たちは印刷物に掲載された情報にはインターネットで簡単にアクセスできるのだと強調している。とはいえ、その言葉だけでホーダーが納得して情報を溜めこむ習慣を断ち切る結果になることは、あまり多くはない。情報は、印刷物のように目に見えるときに、より手に入れやすいと思い込まれるようだ。多くのホーダーから、自分のコンピュータのハードディスクやeメールのアカウントは、捨てるには価値のありすぎるメールでいっぱいになってしまったとの不満を聞いた。私たちは、そこにホーディング行動につながる情報収集能力の問題と同じ働きがあるのかもしれないと考えている。」 pp.343-344 「 ガラクタ整理士という職業の急速な成長と注目度の高さは、私たちの人生から無秩序状態をなくすことに必要性や意義があるのかという疑問を生むことになった。コロンビア大学の経営学教授のエリック・アブラハムソンと、作家で編集者であるデヴィッド・H・フリードマンは、『だらしない人ほどうまくいく』 (文藝春秋、二〇〇七年) を記した。その中で二人は、混乱やガラクタは効率の良さや創造性の指標であり、整理のために時間や労力を使いすぎるのにはそう意味がないという論理を展開している。そして例として、社会で成功を収めた人々を挙げ、彼らに整理したり計画を立てて行動したりするスキルが欠けていることから、結論として混乱は讃えられるべきであり、無秩序であると非難すべきではないとしている。[改頁]  私たちも、調査の結果をふまえて、彼らの論理にもある程度賛成である。私たちのほとんどにとって、ある程度の乱雑さには害がなく、創造性や生産性に寄与することもあるだろう。しかし、深刻な乱雑さが生活の質に影響を与え始めると、利点よりも欠点のほうが大きくなって、無秩序であると認めねばならなくなるだろう。」 pp.345-346 「 アイリーン (1章を参照) や彼女に似た多くの人は、自分のモノから喜び、チャンス、慰め、安心感、そして自己意識や個人史を得てアイデンティティを作り上げている。モノから離れると、自分がモノを無駄にしているという思い、罪悪感、そしてストレスが生じる。私たちも自分[改頁]の持ち物に対して同様の思いを抱くが、アイリーンたちホーダーにとって、何かを手に入れて自分のものにしたいという衝動は非常に強く、それを変えることは難しいのだ。  最近の研究会で、ある権威ある研究者が、OCDに関するセラピーの成果からホーダーを除いたことを打ち明けた。「彼らを入れると、セラピーの結果が悪く見えるの」彼女はそう言った。このコメントには、ホーディングに関する臨床的な知識――治療がたいへん難しく、既存の治療では効果がない――が反映されている。  こうした職業的な不満もまって、私たちは調査や臨床的な経験を基にホーダーに特化した治療プログラムを開発した。実は、私たちはそれまでにも、モノを手に入れるのを抑えたり、モノを効率よく捨てられるようになったり、自宅からガラクタを片づけたりするホーダーを支援していた。セラピーの結果に関する最近の調査では、私たちの治療プログラムの患者は、わずか一二回の治療セッションの後で比較したところ、治療プログラムの順番を待っている人々で構成された対照グループに比べて大幅な改善を見た。全二六回の治療プログラムの終わりには、セラピストによれば三分の二の患者が治療の成果を見せ、患者の八〇パーセント近くが、かなりまたは相当に改善したとの自己評価をした。  この成功にもかかわらず、多くは改善したとはいっても一時的なものに過ぎず、彼らの家は相変わらずガラクタでいっぱいだった。さらに、このような成果がどの程度維持されるかもまだわかっていない。初期の治療プログラムで改善を見せたホーダーの中には、家を片付いた状態に保つのに苦労している人達もいる。」 p.349 「 他の人間の本質についての問題と同様に、人々がガラクタを自分で整理するためのセルフヘルプ本は、市場にたくさん出回っている。インターネットで米アマゾンのウェブサイトをざっと眺めるだけで、解決策を掲げた書籍が九〇冊以上も見つかった。」 日本で挙げるならコンマリの本など. pp.349-350 「これらの書籍の多くは、モノをコントロールするためにさまざまな人を助けて作業してきた長年の経験を持つガラクタ整理士によって書かれたものだ。これらの書籍は、人々が自分の散らかったモノを整理士、すぐに[改頁]使わないモノを処分するためのガイドブックとしての効果があることはもちろんだ。結婚式でもらった記念品や二サイズ小さい洋服を取っておくべきかを決めるためには、これらの本が役に立つだろう。アドバイスは納得のいくもので、自分のモノに普通以上の愛着を持たない人にとっては有益だ。しかし、ホーダーに見られるような強烈な愛着を持っていたり他の問題を抱える人は、これらの本を使ってガラクタを整理することはできないだろう。  精神科医が書いた本もあり、私たちの『宝物に埋もれて――強迫的にモノを集め、溜め込み、ゴミ屋敷にしてしまうあなたへ (Buried in Treasures: Help for COmpulsive Acquiring, Saving and Hoarding)』もその一冊だ。これらの書籍には、ホーディングの固定化した本質についての洞察や、問題解決のための方法などが記されている。ホーディングの習慣を変えるためにこれらの書籍が有効かどうかのテストは、やっと始まったばかりだ。ある人々、とくに問題がそれほど深刻でなく、それほど習慣化していないホーダーにとっては、こうした書籍は有効だろう。とはいえ残念なことに、私たちの患者の多くは本棚何台分ものガラクタ整理の書籍を持ちながら、それらは問題の改善につながらずガラクタを増やすだけなのであるが。」 p.353 「 この研究における大きな課題は、ホーディングの中の病理の部分と有用な部分とをはっきりと分けることにある。モノの細部に注目することは、ある種の創造性や暮らしの中の美を評価することの表れではないだろうか。同じ意味で、物理的な世界に感情移入することは、私たちの暮しの地平線を広げ、世界とのつながりに意味を与(ママ)てくれるだろう。何よりも、ホーディングはチャンスの矛盾を表している。ホーダーは多くのモノにチャンスを見出す才能に恵まれているのだ。彼らはそうしたチャンスをどれも見過ごせず、結局は思い描いた結果をほとんど実現できなくなってしまう。ホーディングは、恵まれると同時に苦しんでいる人々が持つ肯定的かる否定的な能力が、症状として表れたもののように思える。運が良ければ、研究者はこの矛盾を明るみに出し、人々がチャンスをつかみ、そのために犠牲を払わずにするように支援できるだろう。」 送り仮名の「え」が抜けた誤植あり. p.361 参考文献 『だらしない人ほどうまくいく』『消費伝染病「アフルエンザ」 なぜそんなに「物」を買うのか』は上でメモした.付録の『人間における自由』は第1章、第2章、第11章、第13章で出てくる. [/private]

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