談 no.129

古東 哲明 / 永井 晋 / 宮本 省三

2024年3月1日

公益財団法人たばこ総合研究センター

880円(税込)

近代特有の「先へ前へ競わせ駆り立てる仕組み」をフランスの思想家P・ヴィリリオはドロモロジー(dromologie)と名付け、瞬間を抹消させるものだと批判した。ドロモロジーは、最終的に絶対速度(光速)を手に入れ、リアルタイムによる世界同時時間(世界時間)という時間体制を可能にしたからだというのだ。この世界同時時間は、いくつもの弊害を生み出す。「世界の老化」もその一つである。それは、時間的間隔ばかりか、地理空間的間隔も省略されて、時空の差異が消滅することを、つまり世界全体が退縮することを意味する。さらにそこに、電子工学技術(人工衛星・情報収集技術網)による「パノプティコン(一望監視システム)」が追い打ちをかける。世界規模での「警察化(監視化)」が進行する。狭く老いて元気をなくしただけでなく、自由を奪われ「拘禁」されているという閉塞感情が瀰漫する。〈今ここ〉で生きているこのリアルな空間や光景を喪失する。それが世界の老化であり、ドロモロジーの行き着く先だ。今こそ自動化を減速させ、思い切って自律性=オートノミーへ舵を切ろう。

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