歌麿の生涯 写楽を秘めて
新関公子
2019年4月30日
展望社(文京区)
2,970円(税込)
ホビー・スポーツ・美術
歌麿が写楽だったとは!大首絵、雲英摺り、襦袢の脇から両腕を出す奇抜なポーズ、上品な色調、視線の落とし方、確かに同一の作風だ。ところが唯一の同時代文献「浮世絵類考」は、歌麿と写楽を別人と記載している。筆者はこれを歌麿擁護のための捏造記載とみなす。この文献を制作したのは歌麿の親友たちなのである。写楽の役者絵は、返討ちに遭う不運な侍、不義密通をした娘の命乞いに切腹する親、主君の息子と偽って我が子の首を差し出す無情の親、など武士道の弱点ばかり。ご法度の心中ものさえ描いた。かくて写楽は幕府のお尋ね者に。写楽は不人気で消えたのではない。歌麿という正体が露見しそうで、危なくて続けられなかったのだ。本書の白眉は学者たちが金科玉条に信じている「浮世絵類考」のからくりを明かすところにある。
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