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らいふぉん
(無題)
90歳まで現役で臨床の現場にいる聖路加国際病院の名誉院長である著者の思想・生き方が詰まった書。 医学は「病を治す」より以前に「患者を癒す」ことが使命だということを理念に、終末医療の考え方や尊厳死など、患者さんの人生に寄り添う医療を施しておられる。 また、50を過ぎた大人が若者へ与えるべき責任を重く受け止めておられ、若者が長生きしたくないというのは、周りにいる老人が魅力的に見えてないからという思いもあり、70歳のときに、活力のある老人を集めた「新老人運動」を始める。 自身は医学部一年生の終わりに病に倒れ、一年間の入院生活を余儀なくされるが、その経験も患者の気持ちが分かる臨床医になるための大切なことだったと後に気付く。 自身が入院していた頃に音楽に助けられた経験から、音楽療法の普及にも努め、「成人病」という名称を「生活習慣病」に変えるのに20年。人間ドックの開設にも尽力した。 年齢に相当するというより、著者の経験、思想から生き方のモデルというべき歳の重ね方をしておられる。ご自身もモデルをオスラー医師に認め、そこに自分にしかない理念を貫いておられる。 深い洞察から含蓄のある言葉が自然と紡ぎ出される。いくつかを書き留めておく。 人は不幸には過敏だが、幸福には鈍感。 身の程を知った上で望むのが希望、欲深で貪欲なのが願望。 「生活は簡素に、志は高く」(ワーズワース) 「現役」とは、「いま」を生きることに、自分という全存在を賭けている人のこと。 生身の体験が多いほど、感性は育つ。 ボランティアが提供する技術においては、プロをも目指すべき。 「初めに終わりのことを考えよ」(レオナルド・ダ・ヴィンチ) 「わかる」と「わからない」のあいだに非常に大きな隔たりがある。(中略)おとなが子どもと共に試行錯誤し、わかる、わからないを繰り返していくことに、すでに十分、意味がある。
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