〔電子〕社会システム論の構図

永井俊哉

2015年5月20日

Nagai, Toshiya

350円(税込)

人文・思想・社会 / 科学・医学・技術 / ノンフィクション

社会システムとは、ダブル・コンティンジェンシー、すなわち、自己の選択と他者の選択が相互に相手の選択に依存している二重の不確定性を縮減する機能である。パーソンズも、ルーマンも、ダブル・コンティンジェンシーがいかにして縮減されるのかを根源的に説明しておらず、彼らの説明は、畢竟「社会システムが存在するから、社会システムは存在する」という循環論法を越え出るものではなかった。ルーマンの社会システム理論は、オートポイエーシス論と称して、その循環論法に居直ったが、それでは社会システム論の発生論にはならない。 ダブル・コンティンジェンシーがもたらす囚人のディレンマから抜け出すには、高資本の媒介的第三者が必要である。媒介的第三者は、言語、貨幣、刑罰などのコミュニケーション・メディアを通じて、社会的エントロピーを縮減するのだが、従来の社会システム理論では、こうした媒介的第三者の役割が正しく評価されていなかった。本書は、市場や資本の概念を、経済システムにおいて適用される狭義の概念から、家族システム、文化システム、政治システムにおいても適用される広義の概念へと拡張し、結婚市場、言語市場、政治市場での交換による評価のメカニズム、身体資本、文化資本、社交資本の非対称な蓄積のプロセス、支配のロジックと物象化の問題点を社会システム論の立場から幅広く考察する。 本書は、この問題意識に基づき、第一章で、交換としての認識、交換としての結婚、交換としての復讐を取り上げ、これらの交換が、貨幣というコミュニケーション・メディアを通じた経済的交換と同一の構造を持つことを示し、文化システム、家族システム、政治システムにおけるコミュニケーション・メディアの役割と資本蓄積の格差について説明する。第二章では、家族システムにおける父、政治システムにおける権力者、文化システムにおける神といった抑圧的な存在として君臨する媒介的第三者を描き、第三章では、反逆を鎮圧する暴君としてではなく、人々を自発的に服従させ、訓育し、支配する現代の権力のあり方を論じる。

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