〔電子〕ゆかし妖し

堀川アサコ

2019年12月26日

惑星と口笛ブックス

800円(税込)

小説・エッセイ

舞台は足利幕府の京。戦のあと忽然と消えた連れあいを捜して奥州から京までやってきた女、しかし求めていた姿を目の前にしたとき、衰えた体にはもう立ちあがる力さえ残ってなかった。倒れ伏した女は無念のうちに息を引き取る。 女の死はさまざまな謎を連珠のように生んでいく。そしてそれに立ち向かうのは、無双にして無類の幽霊嫌いの検非違使(けびいし)清原龍雪。 空き屋敷に跳梁する妖物、謎めいた美丈夫の判官、首を切られた太夫。 周囲に腕っ節はからっきしだが切れ者の放免清輔、小太りで女装趣味の漏刻博士義時などの味わい深い脇役を配し、鮮やかに繰り広げられる幻想ミステリーここに復活。 2006年第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品『闇鏡』改題。『幻想郵便局』などの幻想シリーズで読書家を喜ばせている日本ファンタジーノベル大賞屈指のストーリーテラー堀川アサコの原点でもある。読みは「ゆかしあやかし」。 表紙はこより。〈ブックス・ファンタスティック〉第6作。 抜粋 それにしても、と龍雪は考える。 (歌などだれでもうたえるとしても、顔のない女というのは──) あのときに自分が見たものは、いったい何だったのか。 彼自身がいい張るように、ただの錯覚だったのか。 しかし、あの顔のない女は、本当に彼の目前にいたのではないのか。 人間の女にしては大柄だった。朽葉色の袿を羽織り、ぺろりと凹凸のない顔の中、にんまりと笑う両眼だけがこちらに向いていた。 目の錯覚などを、こうして脳裡に思い描くことができるものなのか。 (ああ、やめだ、やめだ) そこまで考えて、龍雪はあわてて気を取り直す。危ういところで、全身が総毛立つまで想像をふくらませるところだった。 「鬼殿の手入れならば、昼間に大勢で来ればいいのだ。何もおれ一人が、こんなことをする義理などないわ」 遊び半分の鬼殿探検など、生真面目に実行する必要はない。そう念じつつも、もどるべきか踏み込むべきかと鬼殿の門前で二の足を踏んでいたときである。 女の悲鳴が聞こえた。 作者プロフィール 堀川アサコ (ほりかわ・あさこ ) 二〇〇六年第十八回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞『闇鏡』(改題『ゆかし妖し』)でデビュー。本と小鳥と郷土玩具好き。Twitter(@horikawa789asak)。

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