〔電子〕忘れえぬ人
中谷宇吉郎 / 芥川龍之介 / 久保田万太郎 / 谷崎潤一郎
2023年9月22日
崋山房
0円(税込)
小説・エッセイ
「I駅の一夜」 「中谷宇吉郎は師匠の寺田寅彦にくらべると名文家でもないし、俳諧に遊ぶでもなく、関心も多様ではない。文章に機知を飛ばせるわけでもない。どちらかといえば理科一辺倒だ。けれどもこの理科感覚には、日本人にはどこかぴったりするものがある」 「日本人にはどこかぴったりするものがある」という言葉を、「I駅の一夜」を読了したあとに思い浮かべてみれば、この松岡正剛の言葉の正確さがわかるだろう。 「蜜柑」 「今日は寒かったが、矢張りべか舟を漕いだ、今井橋まで行った、午後からは海苔取りに行く、べか舟が川の面を黒くしていた。いま芥川龍之介集を読んでいる、矢張り胸に来るものは考証物よりも現代物である。『鼻』『羅生門』『芋粥』などよりも、一短篇『蜜柑』の方がどれだけ貴いかしれない。現代に生き現代を生かさねばならぬ、それが全部でないまでもそれが基本でなければならぬ。」 山本周五郎は『青べか日記』でそう述べている。 「三の酉」 明治22年、浅草・田原町に生まれ、青年期までを過ごした生っ粋の下町っ子である久保田万太郎が、下町の人情を平明な言葉で、しみじみと綴った作品。会話文で成るこの作品は劇作家としての本領がいかんなく発揮されている。1956年発表の本作により読売文学賞を受賞した。 「吉野葛」 この谷崎中期の代表作は、とても読後の爽やかさが際立つ。谷崎の作は、読者の好悪の差が大きいのであるが、この 作品に嫌悪を抱く人はいないだろう。谷崎自身も、あるいは谷崎を深く畏敬した作家である中上健次も、この作品を愛する気持を隠そうとしない。失われた忘れがたきものへの愛惜の気持がしみじみと綴られる。紀行随筆小説のメタフィクション的構造にも注目されたい。
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