〔電子〕平屋の研究室と秋のコガネザクラ
菌ネットワーク研究室パラダイムシフト
2024年9月10日
dimorphotheca
0円(税込)
小説・エッセイ
まだ三浦さんが住んでないなら、勝手に入ったって、怒る人はいない、というか雑草たちに僕を慰めて欲しかった。 僕はそっと平屋の庭に足を踏み入れた。 昨日、三浦さんと歩調を合わせて歩いていたことを思い出す。 雑草たちが小さな小さな植物のドームを構成してる場所を見つけて、僕はしゃがみ込んだ。 僕は心の中で雑草たちのドームに話しかけた。 (ねえ、聞いてくれよ、君たち) もちろん返事が聞こえてくる、なんてことは無い。 それでも僕は続けた。 (僕、ここの研究室の研究員になれると思って楽しみにしてたんだよ。それなのに、父さんと母さんは大人の口実で三浦さんと僕の邪魔をしようとするんだ…) 君を心配してくれてるからだよ、と、僕は自分で返事を空想する。 (それはわかるけど…。わかるけどさ…) 学校行ってないんだろ?それを受け止めてくれてることをありがたくと思おうよ。 自分で考えてることなんだけど、本当に植物たちが言いそうなことだな、と僕は不思議な気持ちになった。 (うん…確かにね…) 僕は次に植物たちが言ってくれそうなことを考えた。 祐樹!いいやつ! 僕の空想の中で植物たちが言った。祐樹というのは三浦さんの下の名前だ。 ラインで三浦さんは下の名前をユーザー名に設定していた。 (研究員になれなかったとしても、ここに遊びに来るくらいなら、してもいいよね?) 僕は肯定してくれるに違いないと思いながら植物たちに聞いた。 (いいよー!) ふっ、と僕は笑った。 楽しい。 (ありがとう、君たち) またねー!と空想の返事。 僕は立ち上がってしばし平屋の庭を歩き回った後、敷地の外に出て散歩を続けた。
close
ログイン
Readeeのメインアカウントで
ログインしてください
Readeeへの新規登録は
アプリからお願いします
- Webからの新規登録はできません。
- Facebook、Twitterでのログイ
ンは準備中で、現在ご利用できませ
ん。
X
LINE
楽天ブックスサイト
楽天ブックスアプリ
みんなのレビュー