〔電子〕原爆詩集

峠 三吉

2009年12月15日

青空文庫

0円(税込)

小説・エッセイ

この「原爆詩集」が刊行された1950年代は、朝鮮戦争で原爆使用も考慮(トルーマン声明 1950年11月30日)といった世界史的な緊迫した状況、またその危険を予知した世界擁護世界大会委員会によるストックホルムアピールの署名運動を背景とし、「広島市民からも意思表示がなされるべきだ」(日記)との思いで刊行を決意した。この詩集の多くの作品は、肺葉摘出手術(手術は中止)を受けるために入所した国立広島療養所内の一室で書きあげられた。当時、アメリカ軍はプレスコード(日本に与うる新聞遵則)を指令し、進駐軍への批判、原爆の惨状を訴えることを禁止しており、「有形無形の圧迫を絶えず加えられており、それはますます増大しつつある状態である」(原爆詩集「あとがき」)と記しているような状態の中で書きつがれた。「原爆詩集」は、当初東京の大手出版社から出される予定で、詩人・壷井繁治が奔走するが、結局「編集会議でもいろいろ議論されたのですが、いますぐはだめだということになりました………そちらで大至急ガリ版ででも出してください」(壷井からの書簡)ということで急遽1951年8月6日に間に合わせるために、孔版(ガリ版)印刷されわずか500部発行された。その後、青木書店からの依頼を受け、新しく5篇の作品を書き加え青木文庫版「原爆詩集」が1952年6月に発行された。それは、孔版版「原爆詩集」では不十分と感じ、原爆投下の歴史的性格を捉えるための、いわば象徴性・叙情性から脱却しリアリズムの手法をめざす格闘の痕跡のひとつでもあり、原爆の惨禍を再び繰り返してはならないとする怒り、その意味について追求した歴史的詩集となった。この詩集は今日まで版を重ね、現在も多くの人に愛読されている。一冊の詩集がこんなに長く多くの読者を獲得したということは、日本の詩集出版事情からすれば例をみない稀有なことである。(広島に文学館を! 市民の会・池田正彦)[文字遣い種別]新字新仮名[底本]新編 原爆詩集[出版社]青木書店[初版発行日]1995(平成7)年7月7日

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