【バーゲン本】日本女性の歴史ー性・愛・家族

角川選書

総合女性史研究会 編

KADOKAWA

880円(税込)

バーゲン本

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月20日

性は人間性の本質を成すものである。そして、極めて個人的な営みである性が、社会や時の支配層に都合の良いように管理されていたことは、敢えて意識しなければ見逃しそうになることも現実だ。人間の性をよりヒューマンにするには、性・愛・家族に視点を固定して我が国の女性史を振り返るのが極めて有効である。 例えば、今ここで「妾」を考えてみたいと思う。妾は2号と称することもあるので、現代人は妻以外の愛人と誤解し兼ねないが、ニュアンスが違う事を確認しておきたい。明治3年に制定された「新律綱領」では、妻と妾は同等の二等親と定められた。戸籍に堂々と「妾」と記載されていたのである。一方、「妾奉公」の言葉が今に残るように、妾は奉公人、職業であったのだ。だから契約書もキチンと交わしたのだった。では、このような職業が成立した背景には、どのようなことが考えられるのだろうか。そこにあるのは「家」であり、家父長制であった。妻との間に家の継承者である男子が生まれなければ、男子の誕生を他の女性に頼ったのである。これが日本社会が妾を生んだ理由である。「腹は借り物」との意識が強かったのだ。現代女性が聞けば「女性を道具として見ている」と怒りを買いそうだが、この頃は男性優位どころか女性蔑視の社会だった。明治天皇には、二人の側室がいて、大正天皇は側室の子であった事実は隠しようもない。 さて、我が国の歴史で古代的な共同体が解体され、社会の基本単位として「家」が成立していったのは平安中期であった。社会的・経済的な単位として家が国家機構の中に組み込まれ、課税の単位ともなったのだった。そして、家を代表する戸主が登場し、家族の成員はその戸主の下に把握された。戸主となったのは男である。さらに一旦成立した家は次第に機能の増殖をはじめ、ついには女性は経済的にも社会的にも男に従属するようになっていった。 このように、日本の歴史をみてくると、女性には辛い歴史の連続であったことがわかる。ところが一転、古代に眼を転じると様相は一変する。万葉集を読んでまず感じることは、男女の性愛が極めて自由なことである。女性は気に入った男に対して極めてあけすけにものをいっている。男は気に入った女性のもとに足を運ぶ。3日連続して通えば婚姻成立である。通い婚の場合、妻が妊娠したり、男が他に好きな人ができたりして、足が遠のくことも考えられる。こうした場合、婚姻は自然解消される。古代には女性に対する男の責任がきつく問われなかったかわりに、女性にも相応の自由が保障されていたのである。 このような男女の情愛だけを裏づけとする緩やかな結婚の形態を「対偶婚」という。男女はそれぞれ身体一つで結びつき、愛情が途絶えれば配偶者を代えても非難されない。不安定ではあるが、男女ともに自立してなくては成り立たない関係である。

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