第二次世界大戦外交史 上
岩波文庫 白31-1
芦田 均
2015年11月17日
岩波書店
1,386円(税込)
人文・思想・社会 / 文庫
第二次世界大戦下、世界各国が展開した外交の全貌を、厖大な資料を渉猟、駆使しつつ鋭い視点から描いた一大記録。政治家にして学究であった芦田均(1887-1959)が、後代の日本外交へ向けて憂国の思いを込めた畢生の警世の書でもある。上巻には、ドイツのポーランド侵攻による欧洲での開戦から、日米開戦直前までを収める。
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ぱうあたん
ようやく冷静に
今はどうか分からないが、同世代の愛大法学部卒なら名前くらいは覚えているだろう芦田均が著者の本です。 第二次世界大戦における外交史に焦点を当てています。ページ数の割にボリュームたっぷりに感じたのは遊びの文章がないからだろう。 日本だけでなく、むしろ前半はヨーロッパを中心に話が進んでいく。勿論日本も日中戦争にて無関係ではなかったものの、途中で枢軸国と協調していくことにより対米英路線へと突き進んでいってしまった。 読んでいて難しいと感じた点は、仮に現代に生きる自分がこの時代に行けたとして、果たして戦争回避を行うことが出来たのだろうかということだ。正直自信は無い。統帥権問題、軍部の台頭など個人ではなく集団の構造として戦争へと突き進んでしまったのではないかと思えてしまう。本書では各人物の評価は殆どなく、事実を列挙しているためバイアスが掛かりにくいのではと思っている。たとえば、この本を読む前は近衛文麿が諸悪の根源の一つだと思っていたが、都度戦争回避に意識が向いていたようにも思えてくる。それが必ずしも十分であったかどうかは分からないものの、決して戦争万歳といった考えではなかったはずだ。個人で出来ることの限界に触れた気がする。 平成初期の子どもの頃はまだ戦争を経験された方がご存命であることも多く、ある種太平洋戦争に触れることはタブーな空気感があったように記憶している。あと10年20年経つことで冷静に語ることも出来るのだろうか。 本書は戦後14年経ってから書かれている。まだ傷も癒えない情勢の中、ここまでの文章を遺されたことに改めて尊敬の念を覚える。
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