銀の森へ

沢木耕太郎さんは、僕の大好きな作家の1人である。 名作『深夜特急』でその異国の情緒に心躍らせ、そのほかの著作も見かけたら購入し、ほうほう今回はこうきたかと通ぶってしたりしたものである。 少し仕事の状況が落ち着いたので、さて何か読もうかと本棚を眺めた時この『銀の森へ』が目に入った。 本音を言うと、先ほど大好きと言っておきながら、買ったことを忘れていた。 読むぞ！と意気込んでの読書ではない。その向き合い方がピッタリな本であったと思う。 本作は沢木さんが自身の見た映画評の連載をまとめたものである。 僕も職業柄、映画はかなり見る。見知った作品もたくさん紹介されていたが、未見の作品もかなりあった。その全ての評が、未見のものは瑞々しく、既知のものはより鮮明にスクリーンの世界がありありと立ち現れる。 知らない作品について語られるのは、絵が浮かびづらい分辛い人には辛いかもしれない。 だが、もし心と時間に余裕があれば、是非共に銀の森へ迷い込んでもらいたい。咲いているかもしれない花を求めて。

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