
人口減少社会という希望
コミュニティ経済の生成と地球倫理
朝日選書
広井良典
2013年4月10日
朝日新聞出版
1,540円(税込)
人文・思想・社会
私たちが直面しつつある「人口減少」問題は、悲観すべき事態ではなく、むしろ希望ある転換点、真に豊かで幸せを感じられる社会への格好の入り口ではないのか。明治維新以降そして第2次世界大戦後の日本人は、経済成長・拡大路線をひたすら走り続けてきた。人類史のなかで第三の定常化社会に入りつつある今こそ、人々の意識と社会のありようは大きな転換を迫られている。ローカルな地域に根ざしたコミュニティ経済と、「地球倫理」とも呼ぶべき価値原理。大佛次郎論壇賞ほか数多くの受賞歴をもつ著者が、日本が実現していくべき新たな社会像とその具体的イメージを大胆に提示する。
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(無題)
年金の財源は現役世代が負担するのだから、2004年を境に人口が減り始めたということは、老後が絶望的となる兆しだと誰しもが思うだろう。本書は「人口減少」から人々が抱く「絶望感」を、本気で希望に転換しようとする本である。意表を突く書名であるが、決して奇を衒って読者の気を引こうとしているのではない。本書は、既に行き詰まりを見せているグローバル資本主義の次の経済を語る書である。ともすれば専門バカと揶揄される学者の書ではあるが、その内容は専門の社会保障をベースに哲学、宗教さらには科学史、人類史にも及んでおり近年稀にみるスケールの大きな書である。読んでいて「ワクワク」して来るのは、漠然と思っていたことが著者によって言語化されて「そうだ、そうだ、正にその通り」との想いが生じるからなのだろう。例えば、日本経済は、先進国の中でも「閉じた」構造を持つものであり、GDPに占める輸出額の比が11.4%しかない(ちなみに韓国は43.3%、中国は24.5%、アメリカは7.4%)。つまり日本が「輸出立国」だというのは大嘘なのだ。だから円安誘導して輸出産業がわが国経済を牽引する経済政策は、間違いであることを数字が示している。 もう少し本書の内容に触れると、人類史20万年のなかで、「三つのサイクル」を著者は見いだし、各々のサイクルの前半が「物質文明の拡大期」で人口増加の時代であり、後半は「内的・文化的な発展」期であると同時に人口減少の時代であるとみている。その後半期に「定常社会」を迎えるのであり、現在は「三度目の定常期」を迎えようとしている。定常期とは、成熟した時代のことであり、本書は著者が10年以上にわたって構想してきた「定常社会論」構想の集大成版とも位置づけることができる。 本書は、社会保障ないし福祉と環境、そして経済の全体をにらんだ「持続可能な福祉社会」と呼ぶ社会構想と、そのための政策を述べたものである。こうした大きな社会ビジョンが現在の日本では、あまりにも不足している。また資本主義の進化という大きな視点でみると、過去のそれぞれの段階において分配の不均衡や成長の推進力の枯渇といった「危機」にひんした資本主義は、その修正あるいは「社会化」を「事後的」ないしシステムの根幹に遡ったものへと拡張してきた。そのようにして経済あるは人々の欲望が大きく拡大・成長してきた最後の段階としての定常社会に於いて登場するのが、新たな「コミニュテイ」の生成を強化しつつかつ「資本主義の最も上流にさかのぼった社会化」がこれから行われようとしているのである。
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