精霊の木
上橋菜穂子 / 二木真希子
2004年6月30日
偕成社
1,320円(税込)
絵本・児童書・図鑑
環境破壊で地球に住めなくなった人類は、さまざまな星へ移住した。少年ヤマノシンの住むナイラ星も人類が移り住んでから二百年をむかえようとしていた。ところが、シンの従妹リシアが突然、滅びたと伝えられるナイラ星の民「ロシュナール」の“時の夢見師”の力にめざめてしまう。『精霊の守り人』等「守り人シリーズ」の著者・上橋菜穂子のデビュー作。15年の時を経て装いもあらたな新装改訂版。
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(無題)
環境破壊によって住めなくなった地球を脱出した人類が移住した星のひとつにナイラ星があった。ところがこの星には先住民ロシュナールがいた。この時、彼等が滅んで既に100年が経っていた。高等文明を持つ人類が自然の恵みと共に生きるロシュナールを駆逐する様は、ネイティブアメリカンやアボリジニを彷彿とさせるが、この星を支配下におこうと企てる地球人戦略は、暴力を専らとしたヨーロッパ人よりもっと狡猾であった。ロシュナールの絶滅などおくびにも出さずに、混血を進めるなど自然に任せ、やがてはロシュナールに地球人が取って代わる目論見であった。これはホモサピエンスがネアンデルタール人と混血を重ねながらもやがては取って代わった人類の歴史と軌を一にするものでもあった。 ロシュナールは自然の中で精霊を友として生きる人々であったが、彼等を他の高騰生物と別つ顕著な身体的特徴があった。彼等は三つ目人であった。勿論実際に第三の目があったのではなく、その痕跡としての痣が額にあったに過ぎない。我々は第三の目と聞いた時にとっさに思い浮かべるのは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を超える第六感をこの目の機能になぞらえることだろう。だから、三つ目人は超能力を備えた人とのイメージがある。 本編のヒロインである14歳の少女リシアは、ロシュナールの末裔である。何代にも渡って地球人の中に潜伏して来たロシュナールの超能力がリシアに現出した。彼女は「時の夢見師」であった。彼女の能力は何代も前のロシュナールの記憶を夢の中で実感できるものであった。著者がここで時の夢見師という概念を持ち出したことは大変に興味深い。それは単にストーリー展開を面白くさせようとの意図ばかりでなく、ユング心理学や仏教の唯識論への深い理解があって始めて発想できる事柄だからだ。文化人類学者の素地が小説に活かされた好例と言えよう。 そして、リシアの特殊能力は、100年前の出来事、さらには1000年前の出来事を一つに結びつけて、彼女は人々が1000年の間、脈々と受け継いできた希望の最後の一片となるのであった。 本書は児童書として1989年に出版された。1度の重版を経てその後絶版となっていたが、15年後に新装版として再版された。私達が眼にすることができるのは、この新装版である。四半世紀を経過した今、この本は読書にどのように映るのか。私を読者代表としてコメントさせてもらえるなら、全く古さを感じられない、との印象を第一に語っておきたい。また、児童書となっているが大人が読んでも十分に楽しめるエンタテインメント性とメッセージ性を秘めている。私が少年であった時代には、こんなワクワクする児童書はなかったように記憶している。今の少年達は幸せである。
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