AX アックス
角川文庫
伊坂 幸太郎
2020年2月21日
KADOKAWA
748円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐために仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。物語の新たな可能性を切り拓いた、エンタテインメント小説の最高峰!
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蟷螂の斧
グラスホッパー、マリアビートルに続く、殺し屋シリーズの第三弾です。 前二作が、バッタ(グラスホッパー)、テントウムシ(マリアビートル)、と、題名に昆虫の名前が使われていたのに対し、本作は「AX」アックス、斧という道具になっています。主人公が息子と交わす会話の中に「燈篭の斧」という成語がでてくるのです。このことわざは、カマキリもその気になれば、一発かませるぞ、という意味合いではなく、どちらかというと、はかない抵抗、という意味だそうです。忘れたころに戻ってくるブーメラン、という伏線の技巧は、伊坂幸太郎さんならでは。「ゴールデンスランバー」で極められたものでしょう。カマキリの斧を甘く見るな。さて、投げられたブーメラン、いつ戻ってくるのでしょうか。 【ただ妻がいるからそれでいいんだ】 「兜」は普段は文具メーカーの営業マンだが、業界では一目どころか二目も置かれている、超一流の殺し屋である。家族はそのことを知らない。 そんな兜だが、、、、家では妻に頭があがらない。 高校生の一人息子の克己が呆れるほどなのである。なんでそんなにおふくろにペコペコしてるんだと。 妻にぺこぺこしているわけではないんだ。労わっているだけなのだ。大切なのだ。誓って本当だ。 兜が仕事をやめたいと思い始めたのは、息子が生まれた頃だった。だが、引退するにも金が要る、と言われ、引退するために裏家業を何年も仕方なく続けていた。これをやれば引退できると言われた仕事は、せっかくできた、パパ友を殺すことだった。兜には出来なかった。そして、数日後、この世から消えた。 【最後に行きつくのは、魚肉ソーセージだ】 深夜に家に帰宅して、夜食を食べたいと思ったこと、サラリーマンならあるだろう。 何を食べる?カップラーメン? まだまだだな。 カップラーメンは意外にうるさい。包装しているビニールを破る音、蓋を開ける音、お湯を入れる音。深夜に食べるにはあまりにもうるさいのだ。 そうなるとうちの妻は気付く。 翌朝起きたとき大変なことになる。起きて妻に会った時の重苦しさと言ったら、ない。彼女の吐いたため息が積もって床が見えなくなる。「うるさくてまるで眠れなかった」と指摘された時の、胃の締め付けられる感じは、わからないだろう。 お腹が空いたとき、どうするか。 おにぎりかバナナ、、、、まだまだだ。 深夜とはいえ妻が起きて夜食を作っていたらどうする。彼女の料理を食べなきゃならない。しかも意外に量が多かったりする。 それにおにぎりの消費期限は短い。バナナも意外に日持ちしない。 つまり、 最期に行きつくのは、魚肉ソーセージだ。 音も鳴らなければ、日持ちもする。腹にもたまる。ベストな選択だ。 【妻とのやり取りで大事なことのノウハウ】 「夫に過ちを指摘され、喜ぶ妻はいない」 「面倒な用件を切り出す際には、妻が最も機嫌が良いタイミングを狙わなければならない」 「仕事の要件であっても、決して喜んでいるそぶりを見せてはならない」 「どうして怒っているのか、と訊ね、別に怒っていない、と答えがある場合は、基本的に怒っている」 「相手の話には常に大きく相槌を打たなくてはならない。よほどのことがなければ、オーバーリアクションによって怒られることはない」 「作ってもらった料理はどのような味であろうと、一口でやめてはいけない」 「自分はきちんとやろとしていたが、しかし、”まだ”努力が足りなかった。君のお蔭で気づくことができた、ありがとうと冷静に伝えること」 などなど。 そんなに一生懸命頑張らなくても、と思うくらい親父は母さんに対していつも頑張っていた。妻が心地よく生活できるようにノウハウまでノートに書きつけていた。そのノートと一緒に出てきたのは、僕が描いたつたない絵だった。それにはこう、書かれていた。 「おとうさん、がんばって」 それを見て涙が出た。なぜ親父は自殺なんてしたのか。そんなそぶりはなかったのに。 こんなにも母さんを愛していたのに。残していくなんて考えられなかった。 なぜ親父は死ななければならなかったのか。それを探っていくうちに、親父が自分たちに残したものを見つけたんだ。 切なさとあたたかさ。 兜が絶対に守りたかったもの。 その守り方は、普通の父親らしくはなかったけれど。 兜らしいやり方だった。 もう誰も殺したくないんだ。 この子の父親だと、胸を張って生きたいんだ。 父親らしいことをしてあげたかったんだ。 そんな子どもに対するたくさんの想いがいっぱい詰まった一冊です。もちろん奥様に対しても。
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超一流の殺し屋は愛妻家
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殺し屋の日常を描く
オーディブルにて。 どこかのんびりとしたゆるやかな世界観で展開される殺し屋の日常。ずっとこんな感じで終始ストーリーが展開するのかと思いきや、最後の方は色々と展開がある。 が、前2作を読んでから本作を読んだ自分としてはイマイチしっくりこず。 面白くなかったわけではないけど、すこし期待している感じとはズレた印象。
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