
散り椿
葉室 麟
2012年3月31日
KADOKAWA
1,870円(税込)
小説・エッセイ
かつて一刀流道場の四天王の一人と謳われた瓜生新兵衛が、山間の小藩に帰ってきた。一八年前、勘定方だった新兵衛は、上役の不正を訴えたが認められず、藩を追われた。なぜ、今になって帰郷したのか?新兵衛を居候として迎えることになった甥の若き藩士、坂下藤吾は、迷惑なことと眉をひそめる。藤吾もまた、一年前に、勘定方であった父・源之進を切腹により失っていた。おりしも藩主代替わりをめぐり、側用人・榊原采女と家老・石田玄蕃の対立が先鋭化する中、新兵衛の帰郷は、澱のように淀んだ藩内の秘密を、白日のもとに曝そうとしていたー。
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(無題)
人を愛するとは、何と寂しい事であろうか。ここに描かれた愛は、満ち足りて安穏な日々を送るのとは対極にある境地である。孤高の寂寥感に耐えてこその深い愛である。「散る椿は残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるのだ」。だから采女は、報われずとも愛し続けた人を想いながら散り、新兵衛の妻は、愛する夫の未来を想いながら散っていくのであった。 ストーリーそのものは、よくある「お家騒動」なのだから、特別なことではない。ただ、人間関係が複雑に絡み合っているので、注意深く読み込まないとストーリー展開を見失うことになりかねない。要は、病弱な藩主に代わって藩政をほしいままにした実力派家老と藩主嗣子派の権力闘争である。このままであれば、正義は誰が見ても次期藩主の側にあるから、お家騒動の火種にはなり得ない。そこで一捻り。家老のバックには藩主の兄が控える。長子相続の原則からいえば、この兄が藩主となって然るべきだが、母の出自が卑しいとのことで冷や飯食いの立場に追いやられたのである。その怨念が、次期藩主に己が孫を据えようと野望を抱くのだった。 葉室麟は、組織の中で生きる中間管理職を時代小説の世界へ投影してその閉塞感を描くのを得意としている。本作品の主要登場人物である新兵衛も采女も悲哀に満ちた人生を送らざるを得ない立場である。そんな中で、義を貫いて散っていく男の心情に感動の涙を禁じ得ない。
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