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ジゴロ
角川文庫
伊集院静
1998年10月31日
角川書店
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
渋谷・US劇場の看板ストリッパー・ローズは十七年前の聖夜にひとりの男の子を産んだ。神山吾郎。ローズを愛するさまざまな職の男たちの誰もが吾郎の父親になろうと勇んだ。そして現在、吾郎は様変わりした渋谷の喧騒の中にひとり佇んでいる。人の生き死に、やさしさ、人生のわけを知った幾人かの“父親たち”に見守られながら、吾郎は大きく成長を遂げようとしていたー。世が流転しても変わらぬ、人と人との濃密な時間を描き切った、やるせなく心震える青春巨編。
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(無題)
主人公の名前が「神山吾郎」で書名がTHE GORO ジゴロ。ジゴロと言えば誰しもフランス語のgigoloを思いうかべますよね。フランス語では若いつばめまたは優男という意味ですね。日本でジゴロといった場合、女性にたかったり、女性の収入をあてにする“ひも”ですね。本作の主人公・吾郎は優男であり定職を持ちませんが、わずか17歳にして博打で生活出来るだけの高度な精神性を有しています。 伊集院静にとってギャンブルの師と言えば、阿佐田哲也ですね。その阿佐田哲也を彷彿とさせる尾崎龍次が吾郎のギャンブルの師として登場します。 さて、ギャンブルで常に勝ち続けるのに、何故精神性が要求されるかと言えば、例えば麻雀は4人でやるゲームですが、自分の手の役作りと共に他の3人の手の内を読みながら、最終的に勝利を我が手にする駆け引きが要求されます。ギャンブルというものは、不思議なもので、打ち手の個性や人間性が如実に現れます。それを読まれたら、もう勝利はありません。そんなギャンブルで勝利を手中にする事が出来るのは、克己心に優れ、修羅場を潜り抜けてきた冷徹な個性があって始めて可能です。つまり神山吾郎は題名から連想される生き方とは全く反対の生き方をしています。 むしろ本書は、神山吾郎の純愛小説と言っていいと思われます。また、神山吾郎と彼の父親と思しき優しくて強い男たち、すなわち、神山吾郎の母親ラビアン・ローズが選んだ男達の純愛の物語でもあります。文字通り薔薇色の人生を歩んだ吾郎の母親が今際の際に吾郎を「私のジゴロ」と愛情を込めて呼んでいるんですね。涙腺に自信のある方もハンカチのご用意は必至です。 また、本書の最大の読ませどころは、何と言っても麻雀勝負にあります。私の世代では、若い頃の遊びに麻雀は必須科目でしたから、ハラハラドキドキの勝負の描写場面には、スンナリと入り込めます。今の人たちは麻雀をやりませんから、この小説をどう評価するのでしょうかね。
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