サウスバウンド(上)

角川文庫

奥田英朗

2007年8月31日

角川書店

607円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

小学校6年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても変わってるという。父が会社員だったことはない。物心ついた頃からたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、よその家はそうではないことを知った。父は昔、過激派とかいうのだったらしく、今でも騒動ばかり起こして、僕たち家族を困らせるのだが…。-2006年本屋大賞第2位にランキングした大傑作長編小説。

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奥田英朗「サウスバウンド」

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0
2019年12月14日

みんなのレビュー (1)

とも

(無題)

-- 2018年01月24日

少し前まではKY、最近はイタイ人と言うようですね。周りと同調できずに浮いてしまっているのに、それと気づかない困った人の事です。本作の主人公・上原二郎の父親・一郎がそんな人なんです。こんな人が身近にいると1番迷惑を被るのが家族なんですね。二郎は中野の公立小学校六年生のごく普通の男の子ですが、父親の一番の被害者かもしれません。何しろこの父親は、元過激派の闘士で言う事が過激極まりないんです。国家なんぞは糞食らえと思っていますから、二郎にも国民の三大義務である勤労、納税、教育を受けさせる義務なんて必要ないと教えます。学校なんて行かなくてもいいんだと、うそぶくのです。一郎は実はアナーキストだったんですね。こんな人が普通の市民と混在していたら、面喰らいますよね。一郎はフリーライターを自称していますが、所得があるのかどうかは不明です。生活の糧は母親の喫茶店が稼ぎ出しているようです。 一郎が税金を納めているのかどうかは分かりませんが、国民年金の保険料は未納です。区役所の年金係のおばさんが督促にきて大声で論争を仕掛けているのですから、この事実はご近所周知の事実です。また、こんな態度は誰に対して同じです。二郎の担任教師南先生が家庭訪問に来た時でも、議論をふっかけるのですから。でもね、この南センセ、23歳の年若い女性なんですよね。一郎が自分が書いた小説のゲラを携えて学校に南センセを訪ねる図には、下心が透けて見えますね。中年になっても若い頃の過激派闘士の癖が抜けない人が常識的社会人として生きることが不可能なのは、誰しも容易に想像できます。だから、一郎が実はフリーライターからライを取り除いた存在であり、ドンキホーテのような一種の滑稽さを併せ持った存在なんですね。 変わり者の父親に振り回されている以外は、二郎の日常はその年頃の小学生と変わりありません。彼の周りには仲のいい男子と、ちょっと気になる女子がいて、友人たちと銭湯の女風呂を覗きにいったり、不良中学生にカツあげされそうになったり、小学六年生なりの日常があります。 ある日、一家にひとりの居候が転がり込みます。彼は自分のことをアキラおじさんと呼んでくれと言います。やさしいアキラおじさんでしたが、ある日大きな事件を引き起こします。過激派の内ゲバで、対立相手側のリーダーを殺害してしまったのです。公安警察、刑事警察、過激派が入り乱れての大混乱が始まります。事件はご近所、学校に知れ渡り、一家は地域社会でいたたまれない立場を味わう事になります。ボタンひとつの掛け違えで人生ががらりと変わってしまいます。二郎の母親・さくらと父親・一郎は話し合いの末にサウスバンドをきめます。気がつけば二郎はガスも電気も水道もない、西表島の空家にたどり着いていたのでした。

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