サウスバウンド 上

角川文庫

奥田 英朗

2007年8月31日

KADOKAWA

607円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

小学校6年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても変わってるという。父が会社員だったことはない。物心ついた頃からたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、よその家はそうではないことを知った。父は昔、過激派とかいうのだったらしく、今でも騒動ばかり起こして、僕たち家族を困らせるのだが…。-2006年本屋大賞第2位にランキングした大傑作長編小説。

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長江貴士

書店員

奥田英朗「サウスバウンド」

--
0
2019年12月14日

みんなのレビュー (2)

Readeeユーザー

うちの家族は変わってる

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4.4 2021年12月23日

うちの家族はちょっとヘンだ】 小学六年生になった長男である僕の名前は二郎。父の名前は一郎。 誰が聞いてもその名づけ方は変わってるって言う。 父が会社員だったことはない。 物心ついたころからたいてい家にいた。 父親とはそういうものだ、と思っていたら、 よその家はそうでないことを小学生になって知った。 父は元過激派で、今でも騒動ばかり起こす。 が、普通なはずの母も元過激派だったんだ。 うちの家族はちょっとヘンだ。 訂正。 うちの家族はかなり変わってる。 子どもでいることは本当に損だ。 外を出歩くにも、いちいち制限がかかる。 学校がある時間帯や深夜の時間帯、街中を歩いていたら補導されてしまう。 家出をしようにもすぐ引き戻される。 子どもであるが故、僕が決死の覚悟でやった家出は数時間で終わった。 【誰が決めたんだ、子どもは学校へ行けって】 父が言った。 日本は義務が多すぎる。義務教育なんていい迷惑だ。 日本人だからといって、なぜ国に属さねばならないのか。 税金なんてくそくらえ。年金なんて払う義務などない。 東京で騒動をおこした父のせいで、東京を追われることになった僕ら。 ある朝、母が僕らに言った。 「我が家は、沖縄の西表島に引っ越すことにしました」と。 「あなたたちは永遠に親のものではないので、自立できると判断した時点でひとり立ちしても構いません。ただ、十五歳までは一緒にくらしましょう。だから、今現在の友達とは、いったんお別れです」と。 その二日後には家財道具一切合切処分して、スーツケース三つだけで家族四人(父・母・僕・妹)西表島に立っていた。 空が青かった。 海の色が一色じゃなかった。 沖縄の人は優しかった。分け与える精神が自然と根付いていた。 だから暮らしには困らなかった。 世間はなんて小さいんだ。 世間は歴史も作らないし、人も救わない。 正義でもないし、基準ではない。 世間なんて戦わない人を慰めるだけのものだ。 相変わらずハチャメチャな親だけれど。 今度は何をしでかすのかとハラハラするけれど。 ここにきてよかった。 そう思えた。 パパとママの間に生まれてきてよかった。 自然と思えたんだ。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月24日

少し前まではKY、最近はイタイ人と言うようですね。周りと同調できずに浮いてしまっているのに、それと気づかない困った人の事です。本作の主人公・上原二郎の父親・一郎がそんな人なんです。こんな人が身近にいると1番迷惑を被るのが家族なんですね。二郎は中野の公立小学校六年生のごく普通の男の子ですが、父親の一番の被害者かもしれません。何しろこの父親は、元過激派の闘士で言う事が過激極まりないんです。国家なんぞは糞食らえと思っていますから、二郎にも国民の三大義務である勤労、納税、教育を受けさせる義務なんて必要ないと教えます。学校なんて行かなくてもいいんだと、うそぶくのです。一郎は実はアナーキストだったんですね。こんな人が普通の市民と混在していたら、面喰らいますよね。一郎はフリーライターを自称していますが、所得があるのかどうかは不明です。生活の糧は母親の喫茶店が稼ぎ出しているようです。 一郎が税金を納めているのかどうかは分かりませんが、国民年金の保険料は未納です。区役所の年金係のおばさんが督促にきて大声で論争を仕掛けているのですから、この事実はご近所周知の事実です。また、こんな態度は誰に対して同じです。二郎の担任教師南先生が家庭訪問に来た時でも、議論をふっかけるのですから。でもね、この南センセ、23歳の年若い女性なんですよね。一郎が自分が書いた小説のゲラを携えて学校に南センセを訪ねる図には、下心が透けて見えますね。中年になっても若い頃の過激派闘士の癖が抜けない人が常識的社会人として生きることが不可能なのは、誰しも容易に想像できます。だから、一郎が実はフリーライターからライを取り除いた存在であり、ドンキホーテのような一種の滑稽さを併せ持った存在なんですね。 変わり者の父親に振り回されている以外は、二郎の日常はその年頃の小学生と変わりありません。彼の周りには仲のいい男子と、ちょっと気になる女子がいて、友人たちと銭湯の女風呂を覗きにいったり、不良中学生にカツあげされそうになったり、小学六年生なりの日常があります。 ある日、一家にひとりの居候が転がり込みます。彼は自分のことをアキラおじさんと呼んでくれと言います。やさしいアキラおじさんでしたが、ある日大きな事件を引き起こします。過激派の内ゲバで、対立相手側のリーダーを殺害してしまったのです。公安警察、刑事警察、過激派が入り乱れての大混乱が始まります。事件はご近所、学校に知れ渡り、一家は地域社会でいたたまれない立場を味わう事になります。ボタンひとつの掛け違えで人生ががらりと変わってしまいます。二郎の母親・さくらと父親・一郎は話し合いの末にサウスバンドをきめます。気がつけば二郎はガスも電気も水道もない、西表島の空家にたどり着いていたのでした。

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