夜は短し歩けよ乙女
角川文庫
森見 登美彦
2008年12月31日
KADOKAWA
616円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。
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(無題)
好きなとこ抜粋 p.264 世には、大学生にもなれば恋人がいるという悪しき偏見がある。しかしこれは話が逆なのだ。「大学生にもなれば恋人がいる」という偏見に背を押された愚かな学生たちが、無闇に奔走して身分を取り繕い、その結果、誰にも彼にも恋人がいるという怪現象が生じる。そのことが、さらに偏見を助長する。 虚心坦懐に己を見つめてみるがよい。私もまた、その偏見に背を押されていたのではないか。孤高の男を気取りながら、その実、流行に酔い、恋に恋していただけではないのか。恋に恋する乙女は可愛いこともあろう。だがしかし、恋に恋する男たちの、分けへだてない不気味さよ! p.274 入学以来決して上がらず、今後上がる見込みもまるでない学業成績。大学院へ進むという逃げ口上を高々と掲げて、先送りしただけの就職活動。機転もきかない、才覚もない、貯金もない、腕力もない、根性もない、カリスマ性もない、愛くるしくて頬ずりしたくなる子豚のように可愛げのある男でもない。これだけ「ないない尽くし」では、到底世を渡ってゆけまいぞ。 これはテンポの良い文章遊びを楽しむ小説なのだと思う。私は途中で飽きてしまうというか、普通の京大生の日常のなかに非現実と妄想が入り込んでいくのがあまり好きではなかった。なんで?とどうしても思ってしまう。 スタイリッシュな日常+非現実なら受け入れられるのだけども。(村上春樹とか) 六地蔵とか、ムーンウォークとか出てくるのは楽しい。
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(無題)
黒澤明監督の『生きる』のラストシーンは、志村喬演じるところの胃がんに冒された市役所職員がブランコをこぎながら歌う「ゴンドラの唄」であった。一定年齢以上の人には強く印象付けられた映画である。若く生命力溢れる娘さんに恋愛を勧める唄を口ずさむ死を目前にした初老の男、その対比が生きるということにしみじみとした感傷を覚えたものだった。 ところで、本書の書名がゴンドラの唄の「いのち短し恋せよ乙女」をもじったのは言うまでもないだろう。ゴンドラの唄を踏まえて何らかの意味を持たせているかといえば、それは全くない。単なる語呂合わせである。だから内容はといえば、映画「生きる」とは全く無関係にドタバタ三昧である。内容がドタバタというより、文体がドタバタなのである。本書の面白さはこの文体に負うところが大きい。ゴンドラの唄を思わせる大時代的で意味ありげな用語使いで言い表しているのは、それとは正反対の軟弱で軽〜い内容である。その肩透かし感というか、ミスマッチ感が読者をくすぐるのである。 小説なので、一応ストーリーはある。京都を舞台にした恋愛物といってよいと思われる。場面は大きく4つ。先斗町での不思議な宴会騒ぎ。下鴨納涼古本祭りと不気味な闇鍋。大学祭での奇妙な寸劇と騒動。京都を席捲する風邪である。「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」。先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。
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Readeeユーザー
(無題)
名作。人力つくして天命を待つ。 黒髪の乙女の魅力は果てない。 リアリティ、虚構の複合を感じた。 達磨の置物が欲しいと思う。 奇遇とは自ら引き寄せるものである。
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