消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし

角川SSC新書

ケンジ・ステファン・スズキ

2010年11月30日

角川マガジンズ

836円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

いわゆる高福祉国と呼ばれる国の実態を、デンマークを例に見る。デンマークは数々の調査で「世界一幸せ」とされる国。こうした高福祉国は高い税金を課される高負担国でもあるが、そのような社会で幸せを感じるのはなぜか?デンマーク在住40年超、国籍もデンマークにかえた著者が、政府系機関の報告では見えてこない、国民目線でその理由を説く。例えば国は風邪には薬も出さないが、命に関わる病には全力で治療にあたる。もちろん無料で。こうした徹底した「無駄の削除」と「安心感」が世界が注目する独自の“デンマークモデル”として結実している様子を見ていく。

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3.7 2018年01月28日

デンマークは日本でいう消費税、付加価値税が25%、平均的な所得税が約46%、国民負担率はほぼ七割に上る。我が国は約四割で将来にわたって五割以下に抑えることを目標にしている。中負担、中福祉と言われる所以だ。デンマークの福祉給付については、医療費は無料で、いわゆる「ゆりかごから墓場まで」の手厚い社会福祉制度を実現している。イギリス・レスター大学の教授が調査した幸福度調査でデンマークは第一位という結果を残している(2006年発表)。この幸福度調査では医療、生活水準及び基礎教育を受ける機会に関連した経済的要因が、国民の総体的な幸福感を決定づけていると結論づけている。 世界には低負担、低福祉を国づくりの基本とするアメリカのような国からデンマークや北欧の国まで様々な国が存在する。本書はデンマークの高負担、高福祉の実態を、数字を挙げて、ときには身近な人のエピソードも交えながら紹介している。たとえば、著者の孫は生まれつき重い心臓病を抱えていて、イギリスに手術を受けに行ったが、手術の費用はもちろん、渡航費や現地の食費、そのために両親が休業した分の保障まで出たというのであるからビックリである。 さて、それではデンマークが今日実施している「高福祉・高負担」はいかにして生まれたのか。そこには当然ながら歴史的背景がある。デンマークはキリスト教を国教とする国であり、今日の学校教育においてもキリスト教や倫理教育は各所で必須科目となっており、たとえば大学では哲学の授業を必ず受けることになる。初等教育から大学教育まで必須となっている「倫理や哲学」教育が根底にあってこそ福祉の根本精神「共生」が育まれたのでろう。キリスト教の教えと、哲学・倫理の教育こそ、この国の「高福祉・高負担」の礎であると考えられている。今日のデンマークの福祉が実現されるまでには、国民の不断の努力があったはずだ。 私は高福祉を無条件に礼賛するものではない。なぜなら、高福祉を実現した結果、ある種の無気力を招いて失敗した実例を見聞きしているからだ。ともあれ、福祉は負担を抜きに語ることはできないし、国家の文化的背景と密接不可分である。私たちの国の社会保障を考える上で本書はヒントを与えてくれそうである。

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