吉原暗黒譚
狐面慕情
学研M文庫
誉田哲也
2004年4月30日
Gakken
691円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
吉原大門詰の今村圭吾は、三十八歳の貧乏同心。吉原で頻発している貸し花魁殺しを金で解決してやると、女衒の元締めに話を持ちかけた。お役目とは別に、元花魁のくノ一・彩音、元隠密同心の仙吉とともに、犯人の狐面たちを追い詰めていく。一方、狐面の盗賊に両親を惨殺された過去をもつ娘おようは、上品さと輝くような美貌を持ち、長屋でひっそりと大工の幸助と愛をはぐくんでいたが…。
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(無題)
誉田哲也といえば、警官ものとの思い込みがありましたので、時代小説とは意外の感があります。しかも思いの外と言ったら作者に失礼でしょうが、面白いのです。 物語の舞台は江戸時代の吉原。黒い狐の面を被った者たちが、立続けに3人の花魁を斬り殺す事件が発生しました。奉行所上層部が事件を無視しようとする中で吉原大門面番所の同心今村圭吾は、積極的に事件に関わりを持とうとします。そこに金の匂いをかいだからです。殺された3人の花魁は、女衒の丑三が金に困った上見世の楼主から買い、仲見世や下見世に貸し出していた花魁でした。丑三は幕府公認の色里で花魁を貸し出すという新しい商売を始めたのでした。しかも、これが大当たりです。その商売物の花魁が殺害されたにも関わらず、奉行所が殺害犯の探索に消極的とあっては、今村ならずとも個人的に動いて丑三から謝礼金をせしめようというものです。丑三の花魁が何故殺害されたのか、そのわけを探索するうちに丑三が以前強盗団に入っていたという噂を聞き出し、その強盗団に襲われた家を調べると、おようと言う娘が一人だけ生き残っていたことを知ります。 ここからもう一つの哀しくもホロリとさせられる解離性障害の女おようの物語が始まります。4人目の花魁が襲われたとき、ちょうど居合わせた今村は、相棒の元忍びである彩音の協力もあって、狐面の一味を捕えますが、そのうちの一人は何とおようでした。おようは幼少の頃から父に折檻を受けて心に傷を持ち、また両親が目の前で丑三らに殺されたことでショックを受け、二重人格になっていたのでした。おようを救ったのは朴訥そのものの幸助の愛情でした。
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