森鴎外の『知恵袋』
講談社学術文庫
森 鴎外 / 小堀 桂一郎
1980年12月31日
講談社
1,639円(税込)
人文・思想・社会 / 文庫
自分が先ず自分を信ずることだ。それがあって初めて他人が信頼を寄せてくれるようになる。一たん自信がぐらついて、表情に覚束なさが表れるや否や、他人はたちまち寄りつかなくなる。顔に出た自信喪失の表情はカインの額につけられた罪のしるしと同じことだ。 他人から愛されたいと思ってもそれは此方の自由になることではない。愛されるのが不可能ならせめて畏れられるがよい。これもまた一つの交際法上の要訣である。(本文より) 1 智恵袋 心頭語 1.序言 2.自ら定むる価(自分の評価を決めるのは自分だ) 3.無過の金箔(完全無欠などという評判はかえって危い) 4.人並(十人並みということ) 5.人の短(他人の欠点) 6.人の長(他人の名声) 7.独り負ふべき荷(泣言を人にもらすな) 8.幸に処する道(幸運を得た時の心得) 9.自信(自信を失うな) 10.人にもの乞ふ事(助力を乞うべきか) 11.慌てざること(咄嗟の対応) 12.妄語(約束を守れ) 13.物を蔵むる処(身辺の整頓) 14.世話(世話をやくことの意味) 15.打明くると隠すと(心を打明けることの限界) 16.興ある対話(談話上手ということ) 17.諛はで誉むること(人の褒め方について) 18.客の持帰る物(談話によるもてなし) 19.後言(蔭口について) 20.罵俗(世をののしること) 21.逸事(逸話の虚実) 22.人の家の噂(他家の噂) 23.貶斥(人をおとしめること) 24.善く談ずといふ事(話上手について) 25.寡言の得失(無口なることの利点と弱点) 26.底なき嚢(底なし袋の如き人に注意) 27.我上(自分のことだけを話題にするな) 28.操持(節操について) 29.ひとつ話(同じ事を二度言うのは恥だ) 30.猥褻(猥談について) 31.問(人に物を問う事) 32.怒らざる事(怒りで他人を説得はできない) 33.宗教(宗教を話題にする時) 34.難癖(難癖をつけるということ) 35.書柬(手紙について) 36.嘲弄(他人を嘲けること) 37.担ぐといふこと(人をかつぐこと) 38.半呑半吐(言いかけてやめること) 39.間の悪さ(友人の間の悪さを救え) 40.慰問
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