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桜の森の満開の下
講談社文芸文庫
坂口 安吾 / 川村 湊
1989年4月1日
講談社
1,870円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
なぜ、それが“物語・歴史”だったのだろうかー。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する、“大いなる野性”坂口安吾の“物語・歴史小説世界”。
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(無題)
哲学を学んだ人の文章は難しい。 桜=日本 古来の雅の美の象徴?世の無常 男 =無粋で粗野であるが野山の故郷が原点の素朴で純粋な人間 女=都の宮廷にいた女、あるいは男と宮廷の橋渡し的な存在?モノに執着し贅沢品の嗜好あり。都では不幸な目に遭い孤独であった 高貴な身分であったが落ちぶれた?都への郷愁もある。哀しい首遊びは都人への復讐。あるいは思い出 男は女の孤独に無意識に呼応。桜、日本古来の美に漠然と重々しい感じ、男なりの恐れに似たものをもっている。 美の静けさの裏側には醜い権力闘争や謀反、怨恨とおびただしい数多の血が流されたため? 男は美しい女と暮らし、女から得られない愛や女の欲深さなど、女を通じて孤独を感じていた。しまいにはとうとう女を殺そうとまで追い詰められる。果たして背におった女は醜い鬼であった。しかし女は死して見ると鬼などではなく桜の木の下でまるで生きているかのごとく美しい。 男は生まれて初めて持ったであろう温かい感情、哀しみを背負い、自らが孤独そのものと化す 対して花と、消え去る花びらの冷たさは、女の冷たさであると同時に、男には決して手に入れることのできない残酷で冷酷な都のみやびの美でもある。 それは男の面前で儚くも美しく、そして冷たく消えてしまう。 この二つは永遠に並行線なままであり、だからこそ男は永遠に孤独そのものなのである。
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