鉄の骨

池井戸 潤

2009年10月7日

講談社

1,980円(税込)

小説・エッセイ

「次の地下鉄工事、何としても取って来い」でも談合って犯罪ですよね?謎の日本的システムの中で奔走する、若きゼネコンマン平太の行末はー。

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3.2 2018年01月28日

土木業界に天皇と呼ばれる男がいた。男は三橋満蔵といった。談合屋の親分だ。談合は法律に背く行為だが、実際にはそれがなければ、どの事業者も仕事を進めることはできない。コスト切り下げの過当競争に入れば、最後は赤字覚悟で事業を請け負うことになり、それは会社の自滅を招くからだ。自由競争のお題目は、経営の現実の前では効力を失う。だから、ない方が望ましいが、組織などの運営上また社会生活上、必要なので必要悪という。ところが天皇の異名を持つ三橋は、談合はもう過去のものと考えていた。 事は土木業界に限らない。かつて某市市長はゴミの分別回収の徹底や市職員の削減、保育所の民営化に代表される行政改革を徹底した。その中には、市調達物品の一般競争入札もあった。一般競争入札だから、誰でもが参加できる。それまで受注金額で棲み分けていた大手と中小企業のシェアは、不況の長期化と相待って大手の草刈り場となった。自由競争の行き付くさきは、大手だけが生き延びるのであれば、勤労者の8〜9割を占める中小・零細事業者を倒産させることになり、この国の将来は無い。 さて、物語は大学を出て中堅ゼネコン一松組に入社しマンション建設の現場で働く平太が本社の業務課に異動となる。業務課の仕事は業界の裏表、酸いも甘いも知り抜いた真の実力者で無くては務まらない。業務課は、担当役員である尾形の指揮の下、一丸となって土木工事の受注に取り組んでいた。実は平太を業務課に引っぱった人物も、この尾形だったのである。やがて平太は、談合システムの中核に棲息する人物に出会い、綺麗ごとでは済まされない業界の暗部を覗くことになる。 世の中の穢れた部分を見せられた若者が、旧弊と闘い、乗り越えることで成長を果たしていく。そこに恋愛の問題が絡み、検察捜査とのせめぎあいというスリルが加わる。怒濤のラストシーンはちょっと泣ける。

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