影法師
百田 尚樹
2010年5月31日
講談社
1,760円(税込)
小説・エッセイ
光があるから影ができるのか。影があるから光が生まれるのか。ここに、時代小説でなければ、書けない男たちがいる。父の遺骸を前にして泣く自分に「武士の子なら泣くなっ」と怒鳴った幼い少年の姿。作法も知らぬまま、ただ刀を合わせて刎頚の契りを交わした十四の秋。それからー竹馬の友・磯貝彦四郎の不遇の死を知った国家老・名倉彰蔵は、その死の真相を追う。おまえに何が起きた。おまえは何をした。おれに何ができたのか。
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starstarstar 3.0 2018年03月03日
ゆるーい人間関係が好まれる現代では、濃密な友情を描くのはむづかしいから時代小説仕立てにしたんだと思う。下士の家に生まれ、愚直にしかも真摯に生きた勘一、一方、文武の才能にめぐまれた彦四郎の二人は刎頸の契りを交わす。勘一には大坊潟の干拓という茅島藩にとって起死回生の大事業を成し遂げるという野望があった。その人物に絶対的信頼を置く彦四郎は、自らの人生と命を犠牲にして影法師となって勘一を支えるのだった。大義に生きる勘一と能吏たり得ても英雄たり得ない彦四郎の死に場所を見つけたあとの、覚悟の生き方。全ての真相が明らかになった時、感動なのだろうか、やるせなさなのだろうか、複雑な思いで胸が一杯になってしまった。
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