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闘う力 再発がんに克つ
なかにし 礼
2016年2月25日
講談社
1,100円(税込)
小説・エッセイ / 人文・思想・社会
再び、消えた。「抗がん剤治療」の真実とは!陽子線治療によって、がんを克服した著者。だが、2年半後に再発してしまう。もう陽子線が使えないという逆境の中で、どうやってがんに克つことができたのか!
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(無題)
本書は、なかにし礼の闘病記である。世の中、闘病記は数多く刊行されている。闘病記を読む事で患者やその家族に病気と闘う勇気やキッカケを与えられるからである。私はガンを患っているわけではないし、家族にも患者はいない。なれば、何故本書に気持ちが動かされたのだろうか。なかにし礼79歳、再発ガンに襲われれば、生き延びるより死の確率が高いのは確実だ。若いうちであれば、出会い頭にガンを発症し、あれよあれよという間に死を迎えるのも頷ける。しかし、歳80になんなんとする年代では、ガンを通じて死を身近に感じられるのでなかろうか。つまり、今は健康であるが、いずれ訪れる「死」に対する覚悟を固めたいがための予備知識を本書から仕入れたいと思ったのだった。 人は不治の病・ガンを宣告された時、どう感じるのか。終末期研究の精神科医エリザベス・キューブラー・ロスは死にゆくプロセスを5つの段階に分類した。第一段階は「否認・隔離」である。自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階である。次が「怒り」。なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階である。そして「取引」。なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階である。何かにすがろうという心理状態である。抑うつ、なにもできなくなる段階である。最後に「受容」。最終的に自分が死ぬことを受け入れる段階である。自分が死ぬ事を認めたくなかったり、何故死ななくてはならないかと疑う事は、心の底で死を忌諱しているからである。では何故、死を恐れ、避けるのであろうか。そこに恐怖があるからである。著者はペインクリニックの副作用で幻覚を見る。恨みに満ちた戦場の落ち武者やおどろおどろしい両性具備の性行為である。これが著者の恐怖表現であろうか。 「陽子線治療」によって、食道ガンを克服した著者にガンが再発。「いざ再発となっても、俺には陽子線がある」。ところが同じ場所には陽子線が当てられないことがわかる。心臓がよくない著者は、開胸手術は受けられない。絶望に打ちひしがれ、一度は「緩和ケア」を選択しようと考える。だが、医師たちのアドバイスによって、開胸手術を決断。そこから著者の人生が、大きく旋回する。その後「抗がん剤治療」に切り替える。 著者が自らの存在を問うた時、行き着いたのが「著述業」を営む自分であった。そこで、一度は諦めた小説の執筆にチャレンジし、それが闘病のエネルギー源となったと述懐する。
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