ゲーテの警告

日本を滅ぼす「B層」の正体

講談社+α新書

適菜 収

2011年8月19日

講談社

921円(税込)

人文・思想・社会

「活動的なバカより恐ろしいものはない」-ゲーテ。小泉純一郎、小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人。なぜ我々は三流政治家を権力の中枢に送り込み、「野蛮な時代」へ回帰したのか?「B層」をキーワードに、近代大衆社会の末路を読み解く。

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適菜収「ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体」

本書は、現在の日本を動かす最大勢力である「B層」について分析しつつ、そこに、ほらゲーテも昔こんなこと言ってるよ、今の日本もそんな感じでしょう?と、ゲーテの言葉を引用している、と言う内容です。 内容に入る前に絶賛しておきましょう。これ、マジ面白い!!時々新書を読むけど、久々の超超超大ヒットです、僕の中で。 さて、まず「B層」とは何か。 この呼び方の起源は、2004年12月15日に、スリードという広告会社が作成した、「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」という資料に載っている呼び方をそのまま使っているものです。これは、いわゆる郵政選挙と呼ばれる、小泉純一郎が大勝した選挙において、内閣府が広告会社に依頼したものです。 そこには、郵政民営化に賛成かどうか、IQが高いかどうか、によって、国民を四つに分類し、それぞれにA層~D層という名前をつけています。 その中で、郵政民営化に賛成でかつIQが高くない人たち、を「B層」と名付けています。 本書では、それをそのまま流用する形で「B層」という呼び方を使っています。本書における「B層」の定義を抜き出してみます。 『B層、とは、知的程度がそれほど高くなく、A層(財界勝ち組奇業・大学教授・マスメディア)から投下されたメッセージをそのまま鵜呑みにしてしまう層です。企画書にあるように、「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」ですね。 B層は自分のたまで考えるのではなく、A層から結論を与えられるのを待っている。逆にA層にとって、B層は最大の顧客なので、B層向けコンテンツを中心につくるようになります。 その結果、A層とB層の間で増幅作用が発生し、巨大なB層エネルギーが誕生する。そしてこれが社会全体を飲み込んでしまった状態が我が国の現在です』 本書の冒頭には、こう書かれています。 『今、日本を動かしているのは誰だと思いますか? 内閣総理大臣ですか? 財務官僚ですか? アメリカですか? いいえ、ちがいます。 B層です。』 ここを読んだ瞬間にもう、この作品は間違いなく面白いだろうなぁ、と直感しました。 その後にこんな風に続きます。 『誰もがうっすらと気づいていたけれど、表立っては言えなかったこと。それは、今の日本の最大の謙抑者がB層であるということです。』 そう、確かに気づいていた。はっきりと、明確に、ズバッとした言葉で自分の中で表現できていたわけではないけど、確かに僕も気づいていた。いやーな雰囲気とともに、そういう最大勢力の存在には気づいていた。本書はそれを、明快な言葉でズバッと文章にしてくれたので、本当にすっきりしました。 本書の目的を著者はこんな風に書いています。 『本書の目的は、B層を批判したり、からかったりすることではありません。B層を「上から目線」で非難するのは、無意味であり見当違いです。 (中略) B層が一定の割合で存在するのは必然ですし、B層をなくすことはできません。そうではなくて、わが国におけるB層の急拡大が、歴史上どのような土壌の上に発生したものであるのか、そして、それがわが国の将来にどのような影響を与えるのかについて考える必要があるのです。』 B層が存在することは仕方ない、というのは僕もその通りだなと思うのです。僕の周りにも、あぁこの人はまさにB層だな、というような人がいたりしますけど、そういう人たちの考え方が変わるとはとてもじゃないけど想像出来ないのです。確かに、B層の急拡大はちょっと恐ろしい。僕と同じような恐ろしさを日々実感する人もきっと少なくはないだろうと思います。それでも、結局僕らはB層と共に生きていかなくてはいけない、じゃあどうするのか、というような方向性で考えなくてはいけないんですよね。 と、ここまで色々書いてきましたけど、一つ僕の中で大きな前提があります。僕は本書を、メチャクチャ面白いと感じましたけど、恐らくそれは、『自分はB層ではない』という大きな前提を自分の中に設けている、ということのはずなんですね。でもそれは、過信しすぎるのは怖い。本書を読み続けてずっと感じていたことは、自分がB層だったらどうしよう、という恐怖です。 例えば本書にはこんな文章がある。 『B層の特徴は歴史を知らないことです。そして歴史は趣味の一種であり、それを知らなくても生きていけると、かたくなに信じています。』 僕はそういう人間なんですね。歴史を学ぶことにどれだけの価値があるのか、実感できない。だから、歴史をまったく知らないのです。もちろん、自分が歴史について無知だ、という自覚はあるので、歴史に関わる部分に関しては沈黙する、という程度の節度はあるつもりですが、歴史を学ぶ意志は結局ないわけです。 また僕は、前の民主党が政権をとった選挙の際、少なくともあの瞬間だけは、確実にB層でした。本書を読む限り、あの選挙における民主党のマニュフェストは、詐欺みたいなものだったんだそうです(もちろん、分かっている人には当然の話なんでしょうけど、僕は政治の話も無知でして)。あの時は本当になんとなく、周りの雰囲気に流されるようにして投票をしたのでした。普段はB層ではないかもしれないけど、B層として振舞ってしまう瞬間がある、という可能性はもちろんあります。本書を読んで本当に、B層的な行動だけはすまい、と思ったし、知らないウチにB層的な行動を取ってしまっているかもしれないことを物凄く恐ろしく感じました。 本書は、様々な話が出てくるわけですが、基本的には政治の話が多い。B層が力を持つことで政治がどう変わってしまったのか。 本書にはズバッとこう書かれている。 『B層社会では、政治の低レベル化が進みます。政治家としての能力より、B層に受ける能力のほうが重要になってくるからです。』 それを意識的にやっているのが、小沢一郎であり、小泉純一郎であるんだそうです。小沢一郎は、民主党のマニュフェストが実現不可能であると当然分かっていたし、識者にもそう指摘されていた。しかし、その識者による指摘がB層に届かないことも見抜いていた。そこに小沢一郎の天才性がある。また小泉純一郎は、民間調査会社に世論調査をさせ、政権の支持率が上がることを確認してから参拝を決定した、というような話も本書には出てきます。 B層は、自分に分からないものを徹底的に受け入れない。理解出来ないものを遠ざける。だから、安倍晋三が「戦後レジームからの脱却」と掲げた時、「レジーム」を理解できなかったB層は無視した(と書いてる僕も、レジームの意味は分からない)。一方で、自分の土俵の話には徹底的に食いつく。だからこそ、麻生太郎の漢字の読み間違いには恐ろしい勢いで食いついた。 B層に受けるパフォーマンスが出来るか否か。もはやそれだけが政治家としての評価の対象になってしまっているわけです。 そもそも著者は、『民主主義は最悪の政治形態』と書いています。というかこれは著者だけの意見ではなく、過去様々な知識人が同じ事を言っていたらしいのです。政治に直接民意を反省させてはいけない。これは、ナチス初め、様々な過去の教訓からも明らかなんだそうです。 僕は、『民意を尊重する医者がいたら嫌でしょう』という喩えで凄く納得しました。確かに。医療も政治も、プロがプロによる判断によって動かすべきなのかもしれない、と思いました。 本書には他にも、様々な話が出てくる。章立てとして括られているものとしては、「B層グルメ」と「B層カルチャー」がある。どちらも、B層の存在がいかにグルメやカルチャーに壊滅的な打撃を与えたのか、という話が書かれます。 書店員的に頷けるのは、ベストセラーの話。ここ最近のベストセラーはほとんど、B層が反応することで生み出されている。そしてテレビも本もそうだけど、何故これほどまでに低レベルなコンテンツが溢れているのかというと、頭のいい人間がB層を対象に商品をつくっているからだ、と本書では書かれています。書店の現場にいると、そうだよなぁ、と凄く実感できてしまう話でした。 ちょっと前の話だけど、バイト先のスタッフに話の流れで、『まあ、テレビで言ってることなんて半分以上嘘だからね』って言ったら、「へぇ~そうなんだ~、知らなかった。」という反応をされました。テレビで言ってるから正しい、と鵜呑みにしてしまう人が多いんだなぁ、と実感した出来事でした。もちろんテレビにしたって雑誌にしたって正しいことも書いてあるだろうけど、基本的には、A層の言うことを疑問なく受け入れるB層向けの、誰かが儲かったり都合が悪い部分を隠したり何かの流れを作ったり、そういう意図が隠された情報が垂れ流されている、というのが正しい認識だろうなぁ、と思うんですね。まあ、雑誌は元々読まないし、テレビは最近本当に見なくなったからあくまでもイメージですけどね。 僕は自分が一流にはなれないし、一流のものを理解できるわけでもないということはもう知っています。だからこそせめて僕は、三流のものを必要以上には認めない、という立ち位置をなんとか保とうと思っています。 本書は、なかなか過激なことも書かれているので、内容すべてに賛同しているわけではないけど、B層という最大勢力を定義し、B層がいかに危険な存在であるかを明確に文章にしてくれている、という点で、僕の中で本当にしっくりくる作品でした。メチャクチャ面白かったです!「ゲーテの警告」っていうタイトルは、本当に売れなさそうな匂いしかしませんが、本書を読む限り、これはきっと著者の意向なんだろうなぁ、と勝手に想像しました。この内容なら、いくらでもB層が手に取りそうなタイトルをつけて売り出すことは出来ただろうと思います。でも著者はそれを良しとしなかった。敢えて「ゲーテの警告」という、B層がまったく反応しなさそうなタイトルをつけたんだろう、と勝手に想像しました。だからこそ僕は、この作品をB層まで届くように売るのが目標です。 本書は、日本人必読ではないかと思う作品ですが、特に物を作ったり売ったりしたりしている人には読んで欲しいかもしれません。もちろん、そんなこたぁもう随分前から知っとるわ、という人もいるでしょうし、読んだところで明確な解決があるわけでもなく殺伐とするだけです。ですが、それでも、B層という層をきちんと意識し、それとどう向き合っていくのか、ということを考えることは非常に大事だろう、と思います。本書で描かれる桑田佳祐のように。 というわけで、本当に是非読んでみてください。久々に新書で僕の中で大大大ヒット作品です。メチャクチャ面白いです。 自分用のメモで、POPのフレーズを書いておこう。 『日本人必読の書!ゲーテとかマジ関係ねぇから安心して』 『B層が空気を作る。その空気は、日本を滅ぼす』 『自分がもしB層だったら…と思うと恐ろしい!いや、僕はB層じゃない!…たぶん…

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