聖の青春

講談社文庫

大崎 善生

2002年5月15日

講談社

858円(税込)

ホビー・スポーツ・美術 / 文庫

重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作。

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長江貴士

書店員

大崎善生「聖の青春」

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2019年12月13日

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

病気と闘うすべての人へ

starstarstarstarstar 5.0 2022年03月25日

腎ネフローゼに冒され、1年の半分以上を病院のベッドの上で暮らさなければならない少年の胸が、わけもなくときめいていた。少年は今、将棋という不思議なゲームと出会い、新しい翼を手に入れた。寝静まった病室で月の明かりだけを頼りに、何時間も何時間も勉強した。村山聖、6歳の初秋であった。 【自分には翼がある】 名人というはるかないただきに辿り着くための翼が。 どんなに苦しんでも。苦しみもがいても。自分はあきらめない。 その翼を捨てるわけにはいかないのだ。 深い海に潜りこむように、棋譜の奥深くに潜りその中の一筋の光を探す。 将棋は勝ちか負けの世界。 そこには誰も入り込めない神の世界。 白か黒か。 生きるか死ぬか。 それが彼にとっての将棋の正体であり意味だった。 物心ついたときから、つきまといつづけた死の影。 実際に、日常として体験してきた子供たちの死。 幼い命はまるでプラモデルのように簡単に壊れていく。 聖は物心ついたときから、そんな命のはかなさにいやというほど直面してきた。 子どもたちは信じられないくらいあっけなく自分の前から消えていく。 ふぅ~っとマッチの火を消すように簡単に。 友達が死ぬたび悲しみ、次は自分の番なのではないかと怯えた。 それが、健康に生きてきた人間には持ちようのない底知れない強みを生み出していた。 将棋は大空を自由自在に駆け巡らせてくれる翼だった。 施設での生活もベッドの上の空間も、つらくなくなった。 知れば知るほど、 勉強すればするほど、 広がっていく世界に聖の心は強く惹きつけられた。 聖が手に入れた将棋という翼は、 多くの子どもたちが抱くはかなく泡のように消えていく夢とは違い、 簡単には折れない翼だった。 名人になりたい。 もっともっと強くなりたい。そう心の中で強く念じた。 もっともっと強くなって、名人になりたい。 名人になりたい。 名人という光。 子どもの頃から何十万回と夢に見た名人位。 それが村山を支え、本物の太陽のように心を温めてくれた。 何のために生きる。 今の俺は昨日俺に勝てるか。 勝つも地獄。負けるも地獄。 99の悲しみも1つの喜びで忘れられる。 人間は悲しみ、苦しむために生まれた。 それが人間の宿命であり、幸せだ。 僕は死んでも、もう一度人間に生まれたい。            村山 聖 あんなかわいいやつはいなかった。 あんなに面白い人はいなかった。 あそこまで純粋な男がいるだろうか。 難病と闘い、死を見つめ、 名人の夢ひとすじに生き抜いた村山聖。 家族の絆、友情、心にしみる師弟愛。 29歳で将棋界から惜しまれつつ世を去った鬼才。 「かつて天才・羽生善治と互角の戦いを演じた棋士がいた」 「東野の羽生、西の村山」 病と闘いながら全力で駆け抜けた、わずか29年の生涯。 涙、涙、そして勇気をもらえる一冊です。 すべての病気と闘う人へ。病気の辛さに負けそうな人へ。ぜひ一読を。

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