ぼんくら(下)

講談社文庫

宮部 みゆき

2004年4月15日

講談社

748円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

「俺、ここでいったい何をやっているんだろう」。江戸・深川の鉄瓶長屋を舞台に店子が次々と姿を消すと、差配人の佐吉は蒼白な顔をした。親思いの娘・お露、煮売屋の未亡人・お徳ら個性的な住人たちを脅えさせる怪事件。同心の平四郎と甥の美少年・弓之助が、事件の裏に潜む陰謀に迫る「宮部ワールド」の傑作。

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とも

(無題)

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3.6 2018年01月28日

この作品の面白さのひとつは、登場する人物像が魅力的なところだ。主人公・筒平四郎に淡い思いを抱く煮売屋のお徳。春をひさぐ女・おくめ。お徳の住んでいる長屋に新しい差配としてやってきた佐吉。平四郎の奥方の甥っ子で養子にと望まれる12歳の弓之助もかなりな存在感だ。超のつく美形で、何でも計ってしまう癖がある。頭脳も明晰な少年である。ただ、一つだけ恥ずかしい弱点がある。他にも、記憶力抜群のおでこや美形だが近眼のみすずなどの登場人物も個性的で面白い。 さて、本編であるが、総右衛門の正妻おふじがとうとう葵を絞め殺してしまう。ところが、葵は息を吹き返し、総右衛門に事情を打ち明けた。そこで総右衛門は一計を案じる。おふじは今も葵を殺害したものと思い込んでいるが、もし実は死んでいなかったことを知れば必ずや今度こそ本当に葵を殺してしまうだろう。それを阻むためにはおふじに対しては葵が死んだことにしておくのがよい。むろんおふじが殺人犯とならないためには「殺害」を公表するわけにもいかない。 かくして、葵は子どもの佐吉を置いて「出奔」したことにして、別邸に隠れ住むこととなったのだ。この間、一人取り残された佐吉はやがて住み込みで植木職の修業に入った。だが、おふじは自分の娘が成長するにつれ容姿が葵に似てきたことから心落ち着かなくなる。そこで総右衛門はおふじを、彼女自身の希望にしたがって、葵の遺体を埋めたと信じている土地に住まわせ、そこで葵の供養をさせようとした。 しかし、そのためには、真相を明かすことなく鉄瓶長屋を取りつぶさなければならない。こうして、一連の不可解な出来事はすべて湊屋総右衛門がその目的のために計画したものなのであった。佐吉の抜擢も、異例に若い差配人として失敗することが期待されていたのである。真相をつかんだ井筒平四郎は佐吉を不憫に思う。なぜなら、湊屋総右衛門の計略のために佐吉は母親の「出奔」の真実を知らされることのないまま母親に見捨てられたと信じて育ったからだ。

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