半落ち

講談社文庫

横山 秀夫

2005年9月15日

講談社

649円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとはー。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。

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Readeeユーザー

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4.8 2021年06月24日

「半落ち」ってこういう話だったんだ。 映画化された時に話題になっていて、しばらくしてからテレビか何かで見た記憶はあるのだけれど、内容は覚えていなかった。思い出せるのは主役の寺尾ナントカさんと、裁判官の吉岡ナントカさんだけ。 梶警部が最後まで語らなかったこと。空白の二日間。 そういうことだったのか。 素晴らしい小説でした。

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Readeeユーザー

starstarstar 3.0 2021年03月21日

結末読めなさすぎたけど最後はハッとさせられた。 生きる意味がわかったときはびっくり。警察用語が難しい。

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Readeeユーザー

(無題)

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3.5 2018年01月27日

犯人が事件の真相を全て自白することを「完落ち」。これに対して犯行は自白しても真相を明らかにしないのは「半落ち」。警察隠語ですね。本作も期待にたがわず迫力に満ちた小説で面白く読めました。それにしても横山秀夫の小説を読むと、警察官の世界がよくわかりますね。本作に登場する刑事は、捜査もさることながら取調べを得意としています。「落としの志木」と異名をとるほどですが、最後の最後まで完落ちに持って行くことができません。 現職警察官・梶聡一郎警部が妻を殺したと、自首してくるところから物語は始まります。けれど自首までに空白の2日間があり、それについて梶は頑として口を閉ざします。 何よりも最大のミステリーは、警察官が嘱託殺人をおかした際の出処進退としては、自殺することで警察官として面目を保つとともに警察組織に迷惑をかけない、ということが暗黙の共通認識があるにも拘らず、梶は生きようとしたことです。そこには単なる生への執着とは言い切れないものが感じられます。捜索された梶の自宅の書斎にあった「人間五十年」という梶の書が鍵になります。その書を見た、県警本部捜査官の志木、検察官の佐瀬は、梶が50まで生きた時、自ら命を断つつもりでいることを感じます。 さて、空白の2日間ですが、梶はその間に、歓楽街新宿歌舞伎町に行っていた事実が判明します。外聞の悪さを恐れた県警上層部は隠蔽工作に走ります。その工作に気付いた検察、新聞社との取引きや駆け引きなど、物語は重層的な展開となっていきます。このように本書は、事件に関わった警察官、検察官、新聞記者、弁護士、 裁判官、看守の視点による6つの章から梶の内面を明らかにして行きます。梶の落ち着き払った態度と澄んだ目にそれぞれの章の6人は、不思議と惹き付けられます。 この物語に登場する警察官、検察官、新聞記者、弁護士、 裁判官、看守は全員が社会正義を体現する旨を職業としています。ところが本書では、声高に正義を主張する一方で利害得失に絡んで人間の持つ暗黒面が執拗に描かれます。これは横山秀夫の警察小説に共通していますが、本作の思いがけない結末は、その横山に通底する人間認識とかけ離れたものだけに違和感を感じます。暗い物語がハッピーエンドとなって救われたとみるか、人間の絆を余りに楽観視し過ぎていると見るかは、議論の分かれるところでしょう。

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