天佑、我にあり（下）

▼概要 ・帯文言 「緻密」まるで合戦に参加しているかのような臨場感 ・あらすじ 互いの謀略の限りを尽くし、機は満ちた。武田の鶴翼の布陣に上杉の車懸かりの布陣が襲いかかる。奇襲に次ぐ奇襲、その血で大地の色が変わるほどの無数の死者。なぜ両軍はそれほどまでの死闘を続けたのか?戦いの魔に魅入られた男たちの死に様を精緻な筆致で描く、その緊迫感に頁をめくる手が止まらない。 ■構成 巻ノ六　啄木（承前） 巻ノ七　龍蜷 巻ノ八　死闘 急ノ抄　義縁 ■内容 下巻では、ついに始まった川中島の決戦が始まる。 刻一刻と迫る両雄激突の時。家臣団が感じる空気のひりつき、緊張など、細かく正確に描写されていく。 そして、ついに迎えた回線の時、開戦の時は両者違えども、両雄ともに「天祐、我にあり」とつぶやいたこの川中島の戦は、どのような結末を迎えるのか。 第四次川中島の戦いは、妻女山裏手で起こった。武田先方の忍者と上杉方の忍者の戦いである。この戦いから、この物語は加速度的に進んでいく。 暗闇と霧、そして上杉の忍びに惑わされ、刻限に間に合わず焦りに焦る武田の奇襲隊。 濃い霧がありながらも、八幡原へ刻限通り布陣した武田本軍。 一方で、謙信の冴えにさえた読みにより、武田方の策を読み切った上杉家は、余裕を持って八幡原近くへ位置する。 霧が晴れてきたその時、まず異常を察知したのは武田方であった。目の前に、山の上にいるはずの上杉軍がいる…。 両者の激闘はこうして始まった。開始当初こそ優勢であった上杉方であったが、奇襲隊が合流してからは、武田方が優勢となる。そうして、上杉の優勢がもはやなくなったころ、かの有名な上杉方謙信と武田信玄の一騎打ちが始まるのであった。 この戦の後、両雄は互いの力を認め合い、同時に畏れを抱くようになる。 相手の策を読み切りながらも自身の太が届かなかった謙信、理詰めで練りに練ったにも関わらず完璧に策を読み切られた信玄。 互いの生きざまをかけてまで戦いきった両雄は、この後、激突することはなく、両雄の光景は、同盟を結ぶにまで至る。 この奇妙な縁をもって、南光坊天海はこの戦をこう締めくくったのだった。 「御二方が残した摩訶不思議な義縁ではありますまいか。人は戦いを経ても憎しみ会うだけでなく、相手を認めさえすれば、何かしらの縁でつながることはできる。人は自らの手で憎悪の輪廻を断ち切ることもできる。それが川中島の戦いが唯一残した、類い稀なる教訓であったのではありますまいか。」

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