暗殺 交代寄合伊那衆異聞

講談社文庫

佐伯 泰英

2014年9月12日

講談社

693円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

雪の桜田門外。大老井伊直弼の駕篭が浪士団に急襲された。一部始終を目撃した藤之助の一の家臣光忠は、現場に気になる男を見つける。幕政を独裁した大老の死は、東方交易の行く手にどう関わるのか。藤之助と玲奈はインド洋で決戦に臨む。相手は英国も手を焼く海賊団!時代が動く第二十一巻。文庫書下ろし。

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3.5 2018年01月24日

桜田門外の変が語られます。井伊直弼が暗殺されて藤之助は、文字通り井伊のくびきから解き放たれます。明治まで10年余り、世は激動の時代へと突入しました。歴史の後講釈を滔々と述べる事ほど、愚かなことはありませんが、この当時、時代を適確に見通していたのが井伊直弼と座光寺藤之助でした。ところがこの二人、徳川幕府の存亡に関しては180度違う見解を持っていました。どちらがどうかは、言うまでもありませんね。藤之助は鎖国の禁を破って貿易に新たな生きる道を見出していたのでした。 日米和親条約の締結にもとなって幕府は下田と箱館を開港、鎖国政策は終りを遂げたのでした。これに危機意識を抱いたのが長崎の交易商人と日本在住の中国人でした。鎖国の間は長崎の出島を通じて細々と続けられた貿易を担っていたのは彼らであり、一方では、特権の消滅も意味しました。そこで彼らは出資しあって東方交易を設立したのでした。彼らがモデルとしたのが世界初の株式会社・イギリス東インド会社でした。もしかしたら、東方交易も株式会社の形態をとっていたのかもしれません。当初はマレー諸島の香料をヨーロッパに輸入、後には茶や綿布取引の一方、戦争と地税徴収などによりインドの植民地化を推進したのがこの会社でした。 幕府の権威は地に落ち、タガが外れたようになっているとはいえ、藤之助の貿易は違法行為です。そこで東方交易は中国の上海に設立されました。その時、後ろ盾となったのがジャーディン・マセソン商会でした。イギリスと清と言えば誰しもが思い浮かべるのが、アヘン戦争ですね、そうなんです。この会社、アヘン戦争に深く関わっているんです。設立当初の主な業務は、アヘンの密輸とお茶のイギリスへの輸出だったのですから。 藤之助の東方交易は、ジャーディン・マセソン商会の力添えで貿易に不可欠な船舶を手に入れます。クリッパー型快速帆船『レイナ1世号』と随伴帆船『ストリーム号』です。第一回目の航海で莫大な利益を手中にします。そして今回は、インド亜大陸まで脚を伸ばすとともに、ひょんなことからさらに大型の帆船を手に入れることになります。そこに至るまでのいきさつでは、交易船を狙う海賊団との海戦が描かれていて、手に汗、胸躍るシーンの連続です。玲奈と藤之助との会話によれば、アジアばかりか太平洋を超えてアメリカとの交易も視野に入っているようなので、三隻体制になった東方交易の行方は目を離せません。

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