成功者の告白

講談社+α文庫

神田 昌典

2006年9月21日

講談社

924円(税込)

小説・エッセイ / ビジネス・経済・就職

売れるタイミング、事業の成長と失敗のきっかけ、持ち上がる数々の難題…すべては見えざる法則に導かれていた!全国1万人を超える経営者に成功法則を伝授してきたカリスマコンサルタントが、そのエッセンスをこの1冊に凝縮!!「R25の誕生は、本書のおかげといっても過言ではありません」R25編集長絶賛のベストセラー、待望の文庫化!最高の面白くて、最高に役に立つ。

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神田昌典「成功者の告白 5年間の起業のノウハウを3時間で学べる物語」

正直に言おう。 胡散臭い本なのだと思っていた。 僕は本書を、とある理由から読むことにした。 その理由はここでは書かないが、別に起業しようとか成功者になろうと思って読んだわけではない。読む必要があったから読んだのだ。 だから、自分の中には、本書を読むためのそこまでの積極性はなかった。噛みくだいて言えば、しょーがねーから読むか、というぐらいのスタンスだったのだ。 けれど、冒頭から、本書は面白いかもしれないぞ、という予感を漂わせていたのだ。 『成功に向かう道には、いくつもの地雷が埋まっている。成功が現実のものとなるに応じて、それと等価の困難や障害が用意されていたのだ』 『大きな成功を実現していく過程では、確実に障害が降りかかる。成功だけを持ち逃げできない。私は単なる戒めとしていっているのではない。これは事実なのだ。私が確信できる理由は、短期間に急成長する会社経営者の多くの事例を見てきたからである。』 プロローグに、こんなことが書かれていた。なるほど、これはちょっとよくある自己啓発本とは違うような気がするぞ、と思ったのだ。 しかしとはいえ、まだまだ警戒心を解いたわけではなかった。というのも、「(ビジネス的に)成功すれば、等価の困難や障害がもたらされる」というのは、運不運やバイオリズムの話として説明されてしまうのではないか、という懸念があったからだ。そういう話であれば、面白くもなんともない。しかし、僕のその懸念は、良い意味で裏切られるのだ。 プロローグには、こんなことも書いてある。 『これからあなたに伝えたいことは、地雷を踏むことを回避する方法ではない。残念ながら困難や障害を避けることはできない。しかし上手に乗り越えることはできる』 『根底に流れるテーマは、ビジネスと家庭のバランスを撮りながら、いかに会社をスムーズに成長させるか、ということである』 ビジネス書をそこまで読んでいるわけではないが、ビジネス書という括られる本を読んで、「家庭」の話が出てきたことは、少なくとも僕の経験ではなかったと思う。非常に面白い切り口だと感じた。 そして、こう書かれている。 『物語ではあるが、作り話ではない。特定の人物や会社がモデルになっているわけではないが、この物語は、私に起こった出来事を含め、複数の実話を下敷きにしている。何人もの成功した経営者に出会ってみると、驚くほど似たようなパターンが生じているので、そのパターンから不純物を殺ぎ落としてきた結果、生まれた物語といっていいだろう』 本書は、青島タクという男が、会社を辞め起業し成功するも、その後様々な障害に襲われる、という展開の物語だ。ここで描かれる物語が、本当に色んな成功者が経験した「驚くほど似たようなパターン」であるのかどうか、それは著者の主張を信じるほかないが、これが事実をベースにしていようがいなかろうが、「起業」に関する様々なことを学べる物語だということは間違いないだろう。現代は、生涯同じ会社でサラリーマンとして働き続けることが困難になりつつある世の中と言っていいだろう。そういう世の中だからこそ、自分の人生を見つめ直すためにも、起業する予定などなくても、とりあえず読んでみるのはアリだと思う。 内容に入ろうと思います。 青島タクは、銀行員である父から「安定」を叩き込まれたために大手メーカーに就職したが、その安定から逃げ出したいと思うようになった。そこで、デジウィルというベンチャー企業へと転職した。デジウィルは数ヶ月前まで、その急成長ぶりがマスコミの話題となるほどの注目企業であり、転職したタクは周囲から羨ましがられた。 しかし半年後。タクは転籍(子会社に移り、本社に帰れる予定はなく、給料も減る)させられることになった。生まれてまだ三ヶ月の子どもがいる。どうしたらいいのか…。 転籍させられることを、妻のユキコに話をした。同時にタクは、独立して会社を作る計画を話す。ユキコは、そんなタクの決意を後押ししてくれた。そこからタクは独立へ向けて考え始める。 昼食を食べていると、かつて働いていた大手メーカーで上司だった神崎ヒロシに声を掛けられた。今は独立し、会計事務所とコンサルティング会社を経営している。やり手だ。タクは神埼に、独立する計画があることを話、相談に乗ってもらうことにした。神崎のアドバイスは的確で、タクが有望なビジネスのアイデアを思いついたこともあって、タクの会社は急成長を遂げることになる。 しかし、本題はここからだ。タクは、順調に成長しているはずの会社で、様々なトラブルがあることに気付く。ユキコとの関係もうまくいかない。それを神崎に相談しようとすると、まるで神崎はタクの会社や家庭の内情でも知っているかのように、きっとタクは今こうなっているんだろうね、と指摘する。一体神崎は、何故タクの会社や家庭のトラブルを予測することが出来るのか…。 というような話です。 なんとなくミステリっぽい内容紹介になっちゃいましたけど、別にそういうわけではありません。ただ、物語の展開のさせ方こそミステリ的ではありませんが、神崎が何故タクの会社や家庭のトラブルを予測出来たのか、という話は、まるでミステリの解決編を読んでいるかのような感覚になりました。 そう、タクが経験するトラブルは、きちんと原因や理由があるものであり、それは会社の成長と共に必然的に起こりうるものなのだ、ということを本書では指摘するわけです。 例えば、著者自身が経験したトラブルには、こんなものがある。 ・長男が奇病に罹る ・長女が腸閉塞になる ・家に帰ったら妻がおらず、離婚届がポストにある ・社員が立て続けにメニエール病で倒れる ・同志のコンサルタントがうつ病になり、その後自殺 そしてこれらのいくつかは、青島タクが経験したこととして物語の中でも描かれる。 著者はこれらを、起業の成功による副作用のようなものとして原因追求する。もちろん、科学的に立証できるようなものではないが、本書の中で神崎の口を借りて語られるそれらの原因は、非常に納得感がある。なるほど、そういう説明であれば、100%ではないにせよ理解できる、というような説明をするのだ。 その過程で神崎は、「起業」というものをかなり詳細に分割して捉えてみせる。成長する過程で必要な役割、時期ごとの会社のあり得べき状態、起業家の精神状態などなど。そういったことを細かく捉えた上で、その過程のどんな要素がどんなトラブルに繋がっているのか、という説明をしていく。 先程も書いたが、もちろんこれは科学ではない。本書で描かれる説明が、必ずしも合っているとは限らない。しかしその点は、あまり問題にはならない、と僕は感じた。何故なら、起業家の状態や行動(=「行動」と呼ぶ)が「原因」となって「トラブル」が起こると推測しているわけだが、仮にその「行動」が「トラブル」の「原因」でなかったとしても、その「行動」は避けるべきだと感じられるように本書では描かれているからだ。 もう少し具体的に書こう。本書では、「長男が奇病に罹ったこと」(=「トラブル」)の「原因」が、青島タクの「行き過ぎたプラス思考」(=「行動」)にある、と捉えている。もしかしたら、この捉え方は不正解かもしれない。しかし、それは問題ではないのだ。本書を読めば、「行き過ぎたプラス思考」が「長男が奇病に罹ったこと」の「原因」でなかったとしても、「行き過ぎたプラス思考」を抑えるべきだ、と感じられるようになる、ということだ。仮にそれが直接の原因でなかったとしても、それは悪いものであると認識させられる。そこに本書の大きな意味があるのではないかと思う。 だから、「トラブル」の「原因」として指摘した「行動」が理屈に合わない、と仮に感じたとしても、そのことのみによって本書で書かれていることを単純に切り捨てるのはもったいないと思う。僕は理系の人間なので、やはり科学的に証明できないものに全力で寄りかかるのか怖いと思うし、本書で描かれる「原因」の指摘には、そこの関連性は弱い気がするなぁ、と感じるものもあった。それでも、その点をもって本書を非難する気にはならない。因果関係が仮に証明できなかったとしても、「原因」として指摘された「行動」を取るべきではない理由が伝わると思うからだ。 本書を読むと、「そういう視点から起業という行動や会社という存在を見るのか」と感心させられることが何度もある。今まで「起業」など考えたこともなかったし、「会社」というものも真剣に捉えたことがなかったのだけど、様々な形で「起業」や「会社」を単純化して捉えることで、その本質を捉えようとする視点が面白いと感じた。 本書は、「どうビジネスを軌道に乗せるか?」に対する直接的なヒントも様々に散りばめられている。それらのアドバイスも、実に面白い。「どうお客さんを集めるのか」「少数の大手のクライアントに頼るのは危険」「お客さんの声にこそヒントがある」など、ある意味では当たり前かもしれないのだけど、タクが軌道に乗せようとしている実際のビジネスのアイデアの実例と共にそれらが語られることもあって、非常に分かりやすい。 しかしそういう「どうビジネスを軌道に乗せるか?」という話は、恐らく本書でなくても学べるだろう。やはり本書は、「起業すること」や「会社という存在」の捉え方や、それらをどう活かしてトラブルを回避するのか、という点にこそ主眼がある。 『タク、仕事のために、家庭があるんじゃないんだぞ。家庭が幸せになるために、仕事があるんだ。履き違えるんじゃない』 恐らく多くの人が、「そんなこと分かってる」と思いながら起業するのだろう。しかし、分かっていないのだ。行く先にどんな落とし穴が待ち受けているのか、知らないから「分かってる」などと言えるのだ。 「分かっていないのだ」と思って、謙虚に学ぶことが大事なのだろう。本書は、そのスタートラインに立たせてくれる一冊だと思う。

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