理性の限界ーー不可能性・不確定性・不完全性

講談社現代新書

高橋 昌一郎

2008年6月19日

講談社

1,100円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

私たち人間は、何を、どこまで、どのようにして知ることができるのか?いつか将来、あらゆる問題を理性的に解決できる日が来るのか?あるいは、人間の理性には、永遠に超えられない限界があるのか?従来、哲学で扱われてきたこれらの難問に、多様な視点から切り込んだ議論(ディベート)は、アロウの不可能性定理からハイゼンベルクの不確定性原理、さらにゲーデルの不完全性定理へと展開し、人類の到達した「選択」「科学」「知識」の限界論の核心を明らかにする。そして、覗きこんだ自然界の中心に見えてきたのは、確固たる実在や確実性ではなく…。

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書店員レビュー(1)
書店員レビュー一覧

長江貴士

書店員

高橋昌一郎「理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性」

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0
2019年12月17日

みんなのレビュー (2)

書痴夢

論理の限界が面白い

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4.8 2024年03月31日

このレビューはネタバレ要素を含みます全て見る

Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月21日

限界シリーズ三部作の「感性の限界」が面白かったので、他の二冊も読む事に決めました。実は「感性の限界」が最後に出版されたので、そちらの方が表現などに洗練されたものを感じましたが、本書も十分に面白かったですよ。では、どこが面白いのかを書く事にしますね。やはり何と言っても分かりやすい事が第一です。「雑談が一番分かりやすい」。これは著者の持論だそうです。確かにね。延々と説明して、最後に「で、ざっくり言ってどういう事」こう言われたら、エッセンスだけを手短に説明せざるを得ませんよね。そしてそれが一番納得できる説明になっている事は、僕たちの生活の中でも割とある事ですよね。その意味では、本書でシンポジウム形式を取ったのは、成功していると思われます。多くの専門家や普通の社会人や学生に語らせる事によって、一面的な見方に偏っていませんよ、多面的な見方をしていますよ、とのアッピールになっていますね。 もう一つは専門家のキャラクターが生き生きしてます。その立場の人だったらいかにもそんな物言いをしそうだと思わせるんですね。ある大学の先生から著者に電話が掛かってきたそうです。「あのカント主義者は僕の事じゃないよね」。もちろん、モデルはいないそうです。僕だったらさしずめ、ロマン主義者ですね。だってロマン主義者に一番共感を覚えましたもの。 前置きはこれくらいにして、内容を紹介しましょうね。本書では理性の代表選手として社会科学からは「選択」、自然科学からは「科学」、そしてそれらの根底にある形式科学における「知識」の限界がどの辺りにあるかを探ります。まずは選択です。人間は人生の折り目折り目に選択をしています。その選択は合理的で将来に利得をもたらす事を期待したもののはずです。本書では理性を総動員して判断した選択が、まるであてにならない事を明かします。例えば投票行為は代議制民主主義の基本ですよね。ところがですよ、本書では様々な投票方式が一見合理的に見えて、実はそうでもないことが明かされます。そして完全なる民主主義はありえないとの結論が導かれます。これをアロウの不可能性定理と言います。その内容は僕にはむづかしく手に負えませんが、著書は次のように紹介しています。 アロウは、無数の投票形式を「社会的選択関数」によって一般化し、合理的な個人的選好と民主的な社会的決定形式を厳密に定義してモデル化しました。そのうえで、そのモデルを用いて、完全に民主的な社会的決定方式が存在しないことを証明したわけです。その後アロウは、この業績をさらに数学的に厳密に校正して「一般均衡理論」の定式化を導き、1972年にノーベル経済学賞を受賞しました。 うーむ。どうですか、わかりましたか。分かってもわからなくても、次はハイゼンベルクの不確定性原理です。これは、電子などの素粒子の位置および運動量を決定しようとするとき、素粒子が観察の影響を強く受けてしまい、位置および運動量を同時に決定できないことのようです。アインシュタインの一般相対性理論では、素粒子は正しく観察できないだけで、位置と運動量は一つに決まっていると考えます。一方ボーアの量子論量子論による相補的解釈では、素粒子はある範囲にある確率で広がっており、特定の位置と運動量を持たない、と考えます。つまり一般相対性理論と量子論はそれぞれが現象をうまく説明できるのに、お互いに相容れません。ここらを科学の限界と著者は考えているのでしょうね。 はー、疲れた。ニュートン力学や算数のレベルで止まっている僕の能力では、ここらが理性の限界のようです。本書を理解するには、数理経済学、量子物理学そして論理学と数学基礎論の予備知識が必要なことがよくわかりました。そんなわけで、ゲーデルの不完全性定理に触れるわけにはいきませんが、最後に著者がアマルティア・センの「合理的愚か者」を紹介して将来の方向性を指し示したのに意を強くして、本を閉じることにしましょう。

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