日米同盟の正体
迷走する安全保障
講談社現代新書
孫崎 享
2009年3月19日
講談社
836円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
アメリカ一辺倒では国益を損なう大きな理由。インテリジェンスのプロだからこそ書けた、日本の外交と安全保障の「危機」。
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(無題)
政府のバイアスのかかった情報にしか接していない国民にとって、国際インテリジェンスの最前線にいた経験のある著者の視点や論考は、衝撃的だ。 本書によれば日本を守ってくれるはずの日米安保体制が、国民の知らない間に、完全に米国の戦争協力の道具に変えられてしまったという。また、国会承認条約である日米安保条約が、「日米同盟:未来のための変革と再編」という一片の行政合意で、いとも簡単に否定されてしまったともいう。さらに米国にとっての唯一、最大の脅威は、中東の「テロ」であり、これからの日米同盟とは、米国の「テロ」との戦いに日本がどうやって協力させられていくかだ、という。 真珠湾攻撃・9、11・イラク戦争に共通するアメリカの謀略性を見出し世界を見つめる視点は、説得力に満ちている。 アメリカは大衆の支持なしには戦争ができない国だから、指導者が戦争を必要としたら周到な準備をする伝統がある。リンカーンの南北戦争、ルーズベルトの太平洋戦争、ブッシュのテロとの戦いは、いずれも戦争に持ち込みたい本心を隠して「相手に先に手を出させる」ことで、国民を一気に戦争への熱気に導く事に成功している。 著者は古今東西、謀略は当然の事で、むしろ最高の戦略だと説く。日本人にとって、権謀術策で世界が動いていると考えるのは愉快ではないが、現実に世界は軍事力と密着した政治で動いている。「親米」にしろ、「反米」にしろ、単純化した米国観に縛られると、自らを思考停止に追い込みかねない。対米追従一辺倒の時代がすでに終わったことを改めて確認させられた。
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