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マンダラの謎を解く
三次元からのアプローチ
講談社現代新書
武沢秀一
2009年5月31日
講談社
814円(税込)
ホビー・スポーツ・美術 / 新書
絵だけがマンダラではない!建築家の眼が見抜いたインドと中国の宇宙論の出会い。
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(無題)
皆さんは「田谷の洞窟」をご存知でしょうか。鎌倉観光の番外編、あるいは世界の珍スポットとも呼ばれる真言宗定泉寺境内にある人工洞窟です。イチコクが混んでいる時に僕が使う抜け道沿いにこのお寺があるのですが、本書で紹介されていました。鎌倉時代に真言密教の修行の場として、大勢の僧侶が掘り進めたものです。洞窟は上中下の三段構造で、途中道がいくつも枝分かれしています。洞窟は10個前後の広い空間を通路で結ぶような形で作られていますが、この広い空間や通路の壁面や天井には曼荼羅、十八羅漢、刈萱道心の仏教説話などが彫られています。また西国三十三所、坂東三十三箇所、秩父三十四箇所、四国八十八箇所の壁画は、それらをすべて回ることで巡礼したことの代替とするものです。著者は本書でこのような修行の場が立体マンダラであるとの仮定をたてます。 この仮定の是非はともあれ、マンダラと言えば普通は二次元の図絵を思い浮かべますよね。著者によれば図絵のマンダラの成立以前にすでに三次元のマンダラが存在していたと言うのです。著者によれば、塔(ストゥーパ)がマンダラの原初形態で、そのあとに石窟寺院の中央の柱や仏の宮殿となり、やがて絵の曼荼羅になっていったのだというのです。 マンダラとは、広辞苑によれば「諸尊の悟りの世界を象徴するものとして、一定の方式に基づいて、諸仏・菩薩および神々を網羅して描いた図」となっています。また、新明解国語辞典では「おおぜいの仏や菩薩を、教理に従って、模様のようにかいた絵。仏教の儀式の時に本堂にかけて拝む」と書いてあります。これに対して著者は、インドや中国の仏跡を実際に調査した結果、修行の場である伽藍こそがマンダラであるとの直観を得ます。この辺はいかにも建築家らしいところです。その証拠として、空海が本尊を安置する金堂よりも修行の場である講堂を重視して、 中心に配置した高野山の伽藍形式をあげています。 こんなところは、既存の仏教書からは学ぶことが出来ない知見であり、マンダラがなんであるかに迫るには参考となる論考と言えます。
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