不愉快な現実

中国の大国化、米国の戦略転換

講談社現代新書

孫崎享

2012年3月31日

講談社

836円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

東アジアのハーフバランスの激変で、孤立化が進行している。

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3.4 2018年01月28日

わかりやすく言えば ①中国は間もなくアメリカと並ぶ大国になる ②アメリカは中国との関係を第一とし日本を重視しなくなる ③日本は中国と戦ったら勝ち目はない ④日中間に紛争が起きてもアメリカは日本を助けない ということが不愉快な現実であると著者は言っています。上記の4項目の状況判断から導かれる対策は、どのようなものでしょうか。複数の進路を想定して、どれが好ましいか比較検討するのが常識ですが、これまでの日本外交には、そのような比較検討の習慣が皆無でした。早く言えばアメリカの傘の下で、言われた通りのことをしてきたのが日本の「外交」であったのです。他に選択の余地がないというのが言い訳でした。 4項目を不愉快と感じるのは、中国がアメリカと対等以上になるなどありえない、民主主義国同士の日米同盟は不動である、アメリカの後ろ盾があるから軍事的にも中国に負けることはない、と思い込んでいたからです。実際、中国は急速に軍事力を増強しており、現時点における中国の軍事費は日本の三倍近くに達します。また、中国海軍はついに空母を手に入れました。それゆえ、尖閣諸島近辺で日中間の軍事衝突が起こった場合、日本が勝つシナリオはありません。 それでは、台頭する中国を前にして、日本はいかに立ち回るべきかですね。日本の政治家や官僚の頭の中には、ただ一つの選択肢しかありません。それは米国に追従する、すなわちTPPに参加することです。しかし、この選択肢の効力は失われつつあります。TPPが日本の取るべき現実的な政策であると言うならば、米国より先に日本が主導してTPPを提唱すべきであったはずです。TPP参加を肯定する人間の大半は、冷戦体質を脱却することができず、国際社会の変化から目を背ける現実肯定主義に陥っているにすぎません。それは単なる思考停止と言えますね。 著者は米中関係の変化を踏まえ、日本は東アジアに複合的相互依存関係を構築し、中国との関係を深化させるべきだと主張します。そのための条件として次の三点をあげています。 ①紛争を避けたいという強い思いが存在していること ②領有権の問題よりも紛争回避が重要であるという認識があること ③複合的相互依存を進められる分野が多く存在していること しかし、著者も指摘するように、日中双方にこの戦略を受けいれる準備はできていませんね。そもそも、手を結ぶ相手を単に米国から中国に変えるというだけでは、現在の日米関係が日中関係に変わるだけで、何の変化もありません。 日本が米中間で相応の地位を築いていくには、発想の転換が必要です。限られた量の分捕り合いという土俵で戦えば、最強国が勝つことは自明の理です。領土問題で紛争してはいけないのです。 最強国ではない日本に必要なことは、自国にないものを他国から奪うという量の論理ではなく、自国にないものを創造するという質の論理でありましょう。そこにこそ来るべき「アジア共同体」の中で日本がしかるべき地位を獲得出来る道があるはずです。

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