愛と暴力の戦後とその後
講談社現代新書
赤坂 真理
2014年5月16日
講談社
1,100円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
なぜ私たちはこんなに歴史と切れているのか?『東京プリズン』の作家がこの国の“語りえないもの”を語る。
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(無題)
この本の著者の文章は実に分かりづらい。しばらく読み進めて日本の戦後を自分なりに理解し、知識人としての立ち位置を明らかにしようと、もがき苦しんだ記録である事がわかってくる。どちらかといえば、奇書の部類に属するのではなかろうか。では、なぜそんな厄介な本を読んでみようと思ったのかである。高橋源一郎が言っているのだ。「今の時代にこそ相応しい戦後社会と民主主義について深く検討する本」。こうまで言われては、放ってはおけないというものだ。 戦後を考えることは、とりもなおさず日米関係を考えることである。なぜなら、占領時から現在に至るまで一貫して、我が国の主権が奪われたままであるからだ。これを冷静に認識し、独立国に相応しい主権国家となる手はずを考えることが戦後を考えることである。しかし、本書にはそんなロジックは流れていない。あるのは、感性の鋭さで現実を見抜く力である。事実を積み重ねて、そこからロジックを導き出して世界の有り様を解説するのは主として男の得意技だ。ところが、本書ではそんな手法はとらない。広く世間に流布した常識に違和感を持つ自らの感性を肯定するところからスタートする。 戦後社会を考える上で、天皇の戦争責任は避けて通るわけにはいかない。昭和天皇が戦争責任を問われなかったのは、GHQの意向によるものだ。占領政策を進める上で天皇を利用した方が効果が高いと判断したからだ。それだは、日本人自体が天皇の戦争責任を不問に付したのは、なぜだろうか。戦争の被害者であり、また加害者でもある国民が天皇の戦争責任を問えば、それはとりも直さず自らにナイフを突きつけることになり、その辛さに耐えられなかったからだと、著者は言う。しかし、私に言わせればこれは余りにナイーブすぎると思う。どんな組織であれ、トップには責任はつきものだ。たとえ立憲君主といえども、責任を逃れることができようはずが無い。問題は、天皇制を維持することで利益を得る勢力が戦前、戦後一貫して存在することだ。常に権力側にある彼らが情報操作するのは、実に簡単なことである。人間宣言とその後の行幸によって平和主義者で人格高潔な昭和天皇のイメージを国民の間に浸透させて行ったのである。この国の支配層が、さらに彼らの都合の良い社会に変えようと目論んでいるのは明らかである。 私たちはイギリスのEU離脱に関する国民投票で、多数決による民主主義がいかに危ういものであるかを目の当たりにした。今回の参議院議員選挙の結果は、恐らく自民・公明の与党が勝利を収めるだろう。今回の選挙では、安全保障、憲法改正、消費税率引き上げは論点になっていない。与党に不利になるから取り上げていないだけだ。選挙に勝利した安倍晋三は、これらも国民に信任されたものとして、憲法改正に一気に走ることだろう。何とも嫌な時代になったものだ。
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