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変わった世界 変わらない日本
講談社現代新書
野口 悠紀雄
2014年4月18日
講談社
880円(税込)
ビジネス・経済・就職 / 新書
世界はこんなに変わった!日本はなにも変わらない!アベノミクスでは日本は浮上しない。日本経済を復活させる唯一の解決策とはなにか。
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(無題)
4-6月期のGDPが6.8%のマイナス、6月の鉱工業生産が前月比3.3%減、サラリーマン給与総額(5月)が3.8%下落。我が国の直近の経済指標からは、先行きに悲観的にならざるを得ない。アベノミクス大丈夫なの?、舵取り間違ってないの?、と思えてくる。 我々国民の眼には、アベノミクスは株価の底上げには成功したものの、金融緩和と低金利政策は経済成長に寄与しているようには見えない。なかでも円安誘導は、過去の輸出立国モデルに固執しており、古い産業構造を温存することに躍起になっているに過ぎないと思える。国益あるいは国民の幸せの観点から考えると、貿易収支は既に赤字なのだから、円高政策が正しい選択であると思われるが、政府は政策転換をしようとはしない。 これは世界で経済の構造変化があったにも関わらず、我が国の政策担当者が過去の成功体験に酔って現実が見えなくなっているからだ、この変化の本質が何であるかを論じるのが、本書の第一の目的だ。 著者が言うには、変化の本質は市場経済の復活であるそうだ。それは、分散型情報処理技術の進歩に支えられている。具体的には、大型コンピュータと電話から、PCとインターネットへの転換である。これは、単なる技術面の変化ではなく、経済活動の基本に大きな影響を与えた。中央集権的な経済の優位性が低下し、分権的な経済の優位性が高まった。政府や大企業ではなく、小企業や個人が重要な役割を果たすようになったのである。 いち早く金融自由化に取り組んだイギリス経済は劇的な復活を遂げ、IT化に成功したアメリカは歴史に残る黄金期を迎えた。かつて「欧州の最貧国」といわれたアイルランドは、世界経済の変貌にいち早く対応し、「ケルトの虎」と呼ばれるまでに急成長した。はたして周回遅れの感もある日本に、挽回の余地はあるのか。 本書で著者は、ニッポン復活の明確な処方箋を示しているが、それをここで書くことは差し控える。ただ、一つだけ紹介しておくと、日本の将来を考えるにあたって最も重要な原則は、「経済法則に逆らってはいけない」ということだという。日本は、円安頼みの輸出立国モデルに固執し、為替介入や金融緩和を繰り返し、円安に誘導してきた。その結果、競争力を失いつつあった古い産業が生き延びてしまったのである。 さらに著者は言う、新興国が工業化したことを踏まえて、先進国の比較優位がどこにあるのかを考えることが必要である。これが経済法則に従う考え方であると。
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