西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史

講談社学術文庫

阿部 謹也

2012年3月31日

講談社

1,100円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

エッダ、サガに登場する粗野でたくましい死者のイメージは、中世後期の『黄金伝説』『奇跡をめぐる対話』では、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透……。「真実の告白が、権力による個人形成の核心となる」(M・フーコー)過程を探り、西欧的精神構造の根源を解き明かす。(講談社学術文庫) ミシェル・フーコーは、ヨーロッパにおける「個人」と「権力」の関係についてこう述べています。 「個人としての人間は、長いこと、他の人間たちに基準を求め、また他者との絆を顕示することで(家族・忠誠・庇護などの関係がそれだが)、自己の存在を確認してきた。ところが、彼が自分自身について語りか得るかあるいは語ることを余儀なくされている真実の言説によって、他人が彼を認証することになった。真実の告白は、権力による個人の形成という手続きの核心に登場してきたのである」 ヨーロッパにおいて12〜13世紀にかけて、大きな変化が起こりました。8〜9世紀に起こったカロリング・ルネサンス以降、ゲルマン社会はキリスト教化の動きが顕著になっていきます。そこで登場したのが、「贖罪規定書」です。俗信や魔術など迷信的な世界に生きる民衆の日常生活の細部にいたるまで点検し、個々の行動を裁き、罰を与えるものです。その介入は、「自発的な告解」にもとづくものでした。聖書にもとづく生活モデルに合わないことを罪とし、それに細かく罰を与えたのでした。こうすることで「個人」対「国家権力」が西洋的なあり方で成立していきました。 本書では、「贖罪規定書」以前の死者の国(元気な死者たちが暴れ回る)が、だんだんと弱い死者の国(地獄・煉獄からの助けを求める)へと変化していく様子を、様々な資料から読み解いていくものです。 エッダ、サガ、『奇跡をめぐる対話』、『黄金伝説』そして『贖罪規定書』と様々な資料を渉猟しながら、ヨーロッパの精神構造の根源へと迫ります。 はじめに 第一章 古ゲルマンの亡者たち 第二章 死者の国と死生観 第三章 キリスト教の浸透と死者のイメージの変化 第四章 中世民衆文化研究の方法と『奇跡をめぐる対     話』 第五章 罪の意識と国家権力の確立 第六章 キリスト教の教義とゲルマン的俗信との拮抗       --贖罪規定書にみる俗信の姿 第七章 生き続ける死者たち あとがき 註

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2021年11月20日

 中世にキリスト教が浸透するとともに、罪の意識というものが成立し、同時に人々が抱く死者へのイメージも著しく変化した。死生観の変遷の歴史。前半は『アイスランド・サガ』を中心に古代ゲルマン人の死者のイメージを、後半は『贖罪規定書』に書かれている民衆の習俗習慣などの分析。『中世賤民の宇宙』の続編だそう。

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あめさと

(無題)

starstarstarstar 4.0 2021年07月10日

 中世にキリスト教が浸透するとともに、罪の意識というものが成立し、同時に人々が抱く死者へのイメージも著しく変化した。死生観の変遷の歴史。前半は『アイスランド・サガ』を中心に古代ゲルマン人の死者のイメージを、後半は『贖罪規定書』に書かれている民衆の習俗習慣などの分析。『中世賤民の宇宙』の続編だそう。

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