うちの旦那が甘ちゃんで
講談社文庫
神楽坂 淳
2018年8月10日
講談社
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
はっきり言って月也は「ぼんくら」である。月也とは沙耶の旦那で、風烈廻方同心を拝命している。のほほんとした性格から盗人を取り逃がすことが多く、小者(付き人)たちは愛想を尽かして次々と辞めていった。次の小者を誰にするか。考えあぐねていた沙耶が思いついたのは、なんと「自分」だった。-新感覚時代小説。
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甘ちゃん同心
はっきりいって月也はぼんくらである】 もうそりゃあ、江戸中の誰に聞いても。 彼は甘々のぼんくらの同心だ、と答えるだろう。 ただそれは彼の長所でもある。 甘ちゃんの同心とその妻の物語である。 人間は業が深いと言わざるを得ない。 悪を憎みつつ、それに染まらずにいられる そんな資質を持ったものはなかなか少ない。 人間には欲があり、他人を疑う浅ましい心がある。 奉行や与力や同心は、浅ましさが服を着てるようなものだ。 お前はぼんくらで甘々で、同心としての資質がないと思われている。が、資質がないと周りに思われることがお前の一番の資質なのだ。 ・・・・・わかりません。 上司の言葉には心外だった。実はこれでもちょっとは世慣れていると思っている。 馬鹿にしたのではない、褒めたのだ。 とてもそうは聞こえませぬが。。。。 盗賊を捕えたい、というのは志。 だが、それが過ぎると欲になる。 欲になれば苦しむ庶民は目に入らぬ。 自分のために働くようになる。 我々は天下万人のための先手。 おのれは欲が先走らなくよて良い、と言っているのだ。 月也は妻とともに盗賊討幕へ乗り出した。 そして見事捕まえたのだが・・・・ 盗賊をした理由が「みなしごのために寺子屋を建てるため」と聞くと、 「どうしよう。いい奴だぞ」 盗んだ金は寺子屋を建てるため一銭も手を付けず残してある、と聞くと、 「やっぱり、この男はいい奴だぞ」 結果、ちゃんと自分を捕まえろと犯人に説教される始末。 そんな同心どこにいるのだ。 だがそんな月也からだこそ犯人も抵抗しなかったのかもしれないが。 月也はやっぱり甘ちゃんだ。 でも、だからこそ他の人が支えてくれる。 きりっとした人はその人なりの仕事はできるだろう。 だが、その人の才覚分しか仕事ができない。 頼りなさ過ぎて支えてもらう男は、 支えてくれる人の数だけ仕事ができる。 甘ちゃんでお人好しの、良さといものがあるのだ。
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