日本の大転換
集英社新書
中沢新一
2011年8月31日
集英社
770円(税込)
科学・技術 / 新書
大地震と津波、そして原発の事故により、日本は根底からの転換をとげていかなければいけないことが明らかになった。元通りの世界に「復旧」させることなどはもはや出来ない。未知の領域に踏み出してしまった我々は、これからどのような発想の転換によってこの事態に対処し、「復興」に向けて歩んでいくべきなのか。原子力という生態圏外的テクノロジーからの離脱と、「エネルゴロジー」という新しい概念を考えることで、これからの日本、そしてさらには世界の目指すべき道を指し示す。
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(無題)
一神教が思考の生態圏に外部を持ち込んだやり方は、原子核技術が物質的現実の生態圏に本来そこに所属しない太陽系の現象を取り込んだやり方と、極めてよく似ている。原子力発電による第七次エネルギー革命が地球生態圏に持ち込んだものも、それとよく似ている。原子力と資本主義は,生態圏に対する外部性の構造によって,おたがいに兄弟のように似ている。生命的な生態圏と精神的な生態圏に対して,両者は類似の〈外部的な振るまい〉をおこなうことによって,これら2種類の生態圏に深刻なリスクを発生させる。 福島第1原発事故は,単に原子力発電所が機能不全に陥ったのではなく,資本主義制度に組みこまれた原子の「炉」が破綻したのである。今回の出来事が,日本文明にとってまさに「文明的危機」を現わすほどの重大性をもつと認識されるのは,それが《文明と経済のむすびつき》の根幹にふれているからである。経済成長の基盤を再生可能エネルギーに置換するだけではすまない。「脱原発」なら「脱資本主義」も見据えた、文明の大転換が必要と著者は説く。鍵となるのは、内に贈与の次元を孕む、第一次産業の可能性だ。が、海や山、森や田畑は、すでに放射能によって深刻に汚染されつつある。この劣勢から、どうやって起死回生を計るのか。著者自身によって立ち上げが表明された「緑の党」の活動で、その全容があきらかになるのを期待したい。
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