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人間って何ですか?
集英社新書
夢枕獏 / 池谷裕二
2014年4月17日
集英社
792円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
なぜ人間はこの宇宙に存在しているのか、もしも人間が存在しなかったら…?作家・夢枕獏が、各界の最先端に身を置く第一人者と真剣勝負!最も根源的な問いに答えるべく、脳科学や物理学、考古学など、ジャンルに捉われぬ様々な切り口からその解を探った。超豪華メンバーとの対談から導き出された、究極の人間像とは?書下ろしによる解題も収録。
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(無題)
「生命は渦です。私たち生命は宇宙を効果的に老化させるために存在しているんです」。脳研究者の池谷センセはこう宣うが、私には何のことやらさっぱり。これを聞いた作家の夢枕獏は「よくわかります。確かにそうだね」と。僕とはオツムの出来具合が相当に違うようだ。 本書は夢枕獏が脳研究者の池谷裕二、 宇宙物理学者の佐藤勝彦、生物学者の岡村道雄、考古学者の長沼毅、宗教学者の島薗進、海洋生物学者の窪寺恒己、幹細胞生物学者の八代嘉美、芸人のビートたけしにインタビューして人間とは何であるかを明らかにしようとする試みである。 それぞれがそれぞれの専門の立場から言及するが、統一された見解やまとめといったものは全く見当たらない。だから、本書を読んだからといって人間理解が深まることは恐らくないだろう。その意味ではちょっと期待外れの本だった。 冒頭の池谷裕二は「人間とは何か」と問われて「人間はどこから来て何処へ行くのか、人間存在の意味などといった答えの無いことを真剣に考えるのが人間の人間たる所以」と述べているのは印象的であった。人間なんて、産まれ落ちて生きて死んでいく、ただそれだけのものでそれ以上の意味なんて無い、私がこう考えるようになったのは年齢のせいだろうか。何故なら若い頃は今とは違う考え方で自分を律していたからである。そう、仏教的倫理観で自分を律していたと言って良いだろう。 先ず自己否定が大前提にあった。自分は不完全な存在なのだから、修行しなければならない。他人のための行いをすることによって人格的な完成を得ることができる。そのために我慢し、犠牲にならなくてはならない、とのものだ。もう一つは生死が連続するという輪廻的生命観だ。金持ちでありたい、あるいは才能豊かでありたい、と願うが現実はそうではない。それは前世で善根を積んでいないからであって、だから今、善根を積む修行をしようという考えである。 今思うに、これらの考え方のベースには欲望があったのだろうと思う。金持ちになりたい、社会で尊敬される地位に就きたい、だから今はじっと我慢する、とのものだ。 こんな考え方に変化が訪れたのは「自分はもう終わった人間だ」と自覚した時からであった。終わってしまっていれば、金持ちになろうとも思わないし、社会的地位にも大して価値を認めようとも思わなくなってしまう。 何より「もう我慢しなくても良い」、これは強い武器になった。やりたいことをやりたいようにやる自由を手を入れたのだから、自分にも自然と自己肯定的になる。やはり自己否定より自己肯定の方が健康的だ。
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