ユートピア
集英社文庫(日本)
湊 かなえ
2018年6月21日
集英社
814円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。先祖代々からの住人と新たな入居者が混在するその町で生まれ育った久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。一方、陶芸家のすみれは、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援するブランドの立ち上げを思いつく。出だしは上々だったが、ある噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂い始めー。緊迫の心理ミステリー。
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これが人だな
starstarstarstar 4.1 2018年08月07日
star
読み終えた時に率直に思った事が『これが人だな』だった。 各家庭の問題なんて当人しか分からない。 自分の子供の事ですら考えている事を100%分かっているわけではない。 それが人間だと思った。 田舎町で少しの成功を収めると僻む人が出てくるし、親が混じっての噂話。 そのせいで噂話をしている人の知らないところで悪循環が始まる事も珍しい話ではない。 本当に、人の心ってと思う作品。 しかも、それは大人だけではなく子供もだ。 親の心子知らず・・・自分もそうだったがやっぱりそれが人の心だ。 しかしながら、別に嫌な感情で終わった訳ではないのが不思議。 これが、湊かなえワールドなのかな? まだ2作品しか読んでないので分からないがもっと本作者の作品を読んでみたいと思う。
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湊かなえらしいが…
告白、しらゆき姫に続いて読んだが、湊かなえらしい登場人物の描写は変わらない。 一つの事実であってもそれぞれの感じ方が違い、それぞれ違う感情を持つのだということがまざまざと示される。 みんな違ってみんな良い、わけではないということ。解説にある、主観と主観の殴り合いが展開される。そして悪人の全てが悪ではなく、普通に生きる人間にも悪意は満ち溢れるのである。 ストーリーとしては、最後に明かされる事実により色々なパーツが繋がるが、それもまた再読すると途中における登場人物の想いをより感じるスパイスになるのだろう。 が、しかし、最近少し彼女の作品を読み進めるのがしんどいのは、彼女の作風全般に伝わる停滞感。重い、そして誰も幸せにならない。ゆえの読後の清涼感のなさ、である。 ということで、ストーリーとしてはよくできていたと思うが、星3つと相成るのである。
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