オール・マイ・ラビング

東京バンドワゴン

集英社文庫

小路幸也

2012年4月30日

集英社

660円(税込)

小説・エッセイ

東京、下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」を営む堀田家は、今は珍しき四世代の大家族。店には色々な古本が持ち込まれ、堀田家の面々はまたしても、ご近所さんともども謎の事件に巻き込まれる。ページが増える百物語の和とじ本に、店の前に置き去りにされた捨て猫ならぬ猫の本。そして、いつもふらふらとしている我南人にも、ある変化が…。ますます賑やかになった大人気シリーズ、第5弾。

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-- 2019年12月15日

小路幸也「オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン」

本書は、東京バンドワゴンシリーズの最新刊です。4編の短編が収録された連作短編集です。 まず全体の設定について書いておきましょう。 舞台は、下町にある古本屋<東京バンドワゴン>。大黒柱である古書店主・勘一を初めとし、その息子で伝説のロッカーである我南人やら、さらにその下の世代まで4世代同居の超大家族です。近くの神社の神主やら、IT企業の社長やら、近くの小料理屋の夫婦やら、家族ではないけど仲間というような人たちもわらわら関わって、常に賑やかな堀田家です。 そんな堀田家の面々を見ている、本書の視点となる人物は、既に他界してしまった勘一の妻サチです。サチの家族を見る温かい視線が、物語全体をさらに素敵なものにしています。 「夏 あなたの笑窪は縁ふたつ」 勘一は、近くの神社の神主であり幼なじみである祐円と、かつての知り合いである<ネズミ>の墓参りに向かう。それに同行した祐円の甥っ子が、寺でやった大学の合宿で百物語をやったという。そこで実に恐ろしい体験をしたと言って勘一に相談するのだが…。 一方で、IT企業の社長である藤島が、堀田家の隣に建てたアパート<藤島ハウス>への引越し作業が同時にあって、人手が足りなくなるということで、亜美の弟・修一が呼ばれて店番を手伝うことに。しかしこの修一が今、道ならぬ恋をしているのだとかなんだとか…。 「秋 さよなら三角また会う日まで」 店の前に、<捨て猫>と書かれたダンボールが置かれている。中にあったのは、猫に関係する古本。これは一体なんなのだろうなぁ、と堀田家の面々は首を傾げることになる。 一方で、近隣の住民から、<東京バンドワゴン>について文化庁だか新聞記者だかが調べている、という話を聞かされる。思い当たることがあったのか、勘一は家族を集めて話をするのだが…。 「冬 背で泣いてる師走かな」 紺の大学時代の恩師が<東京バンドワゴン>にやってくる。紺を訪ねてきたらしいのだけど不在。どうやら家に蔵書を置けなくなったのでどうしたらいいだろうか、という相談だったようで、それならと勘一は、静岡にある<東雲文庫>を紹介する。しかしそれを聞いた紺は急いで<東雲文庫>に足を運ぶことに…。 一方で、IT企業の社長の藤島はあることで思い悩んでいた。だったらと、我南人に、クリスマスパーティーにみんな呼んじゃいなよ、と言われるのだが…。 「春 オール・マイ・ラビング」 我南人の周囲がちょっと騒がしくなっていく。とある事情で祐円と藤島に持ち込まれた内密の相談事も我南人に関わるものだし、アメリカからやってきたハリーって男の用件も我南人絡みだった。 一方で、研人は卒業式を控え、何かやろうとしているらしい。同級生であるメリーちゃんに、何か思い出に残ることを、と言われて張り切っているようなのだけど…。 というような話です。 いやー、相変わらずこのシリーズは素晴らしすぎますね!本書はシリーズ第五弾です。正直、僕は読んだ本についてすぐ忘れちゃうんで、前のシリーズの話をするっと忘れていることが多くて、全部読み返したいなぁ、という気分になりました。 ホントに、これほど登場人物たちに愛着を感じる小説って、なかなかないと思うんですよね。登場人物表を見てもらえばわかると思うんですけど、この登場人物の多さはちょっと異常ですよね。でも、確かに前作までのシリーズの内容は忘れてますけど(笑)、一人ひとりどんなキャラだったのかというのは大体覚えてるし、これだけキャラクターがいても、その書き分けは見事なものがありますね。本当に、ある家族の成長を間近で見守っている、というような感じがします。 ストーリーもそれぞれもちろん面白いんだけど、正直このストーリーだけ取り出してもダメですよね。別のなんてことないキャラクターたちが、本書と同じストーリーで描かれていても、たぶん全然ダメでしょう。まあどの小説もそうであることを目指して書かれているのだとは思うのだけど、このシリーズほど、ストーリーがキャラクターにぴったりと寄り添っている作品はないんじゃないかな、という気がします。このキャラクターたちだからこそ、このストーリーが活きる、という話ばかりで、うまいこと考えるものだなと思います。 ストーリーで一番好きなのは、やっぱり「夏」の話ですね。これはもうラストが素晴らしすぎます。ラストである登場人物が言うセリフがすごくよくて、ここに書こうかとも思ったけど、やっぱそれはちょいネタバレになっちゃうよなぁという風に思ったのでやめておきます。 「秋」も、ラストちょっとあまりにも現実的ではないような気がする展開が出てきますけど、さすがという感じの仕切りですね。この「秋」のラストは、京極夏彦の「巷説百物語」シリーズのライト版かな、という感じもします。 「春」の研人もよかったですね。このシリーズは、サザエさんみたいに登場人物が年を取らない話じゃなくて、きちんと皆成長していくわけなんだけど、この「春」の話で研人の成長が物凄くよく分かります。 このシリーズを読んでると、大家族って羨ましいなぁ、と思いますね。これだけ毎日賑やかで、しかも楽しいことがあって、近所とも親しくしていて、しかも<東京バンドワゴン>を慕ってくれる人がそれこそ山ほどいるなんていう環境だったら、素敵だよなぁ、と思います。でも同時に、まあ大抵の大家族はここまでいいもんじゃないだろう、とも思いますけど(笑)。このシリーズを読むと、大家族に憧れますけど、僕自身の性格を考えると、まず大家族は向いてないだろうなとも思います。ただ生まれた時から大家族だったらまた別なのかなぁ。 というわけで、やっぱり素敵過ぎるシリーズです!このシリーズはやっぱり、1巻から順に読んでいくのが一番ベストだと思います!是非是非読んでみてください!

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